人口減少・高齢化と生活環境[新装版] 山間地域とソーシャル・キャピタルの事例に学ぶ
内容紹介
日本各地の山間地域の実地調査により過疎地域の状況と地域の生活機能が衰退していく過程を分析するとともに,ニュータウンの衰退に見られるように大都市近郊でも確実に進行している人口減少・高齢化の問題を検討する。そしてこれら諸問題の解決の糸口としての「社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)」の可能性を考察する。地方創生論のさきがけ,新装版で登場。
目次
はしがき
新装版に際して
第1章 序論:山間地域研究の軌跡と本書の視座
第1節 過疎の概要と過疎研究の問題点
第2節 山間地域研究・山村研究の軌跡
第3節 本書の視座と構成
第I部 過疎問題の概要と人口流出の実態
第2章 地域問題としての過疎とその実態
第1節 社会変動・近代化と過疎問題
第2節 農村人口の変動
第3節 過疎の定義
第4節 過疎地域における地域機能の衰退・損失:regional deprivation
第5節 過疎法による「過疎」の要件と過疎指定地域
第6節 過疎の地域的特性と類型
第7節 日本における過疎・過密問題と人口移動
第8節 2000年国勢調査速報値データによる過疎の実態
第9節 おわりに:人口変動と過疎
第3章 過疎山村・大分県上津江村からの人口移動の分析
第1節 はじめに
第2節 人口移動研究上の視点と本章の課題
第3節 上津江村からの転出者の特性と移動の空間的パターン
第4節 転出者の特性と移動の意志決定
第5節 過疎集落の変貌:上津江村K集落の場合
第6節 おわりに
第II部 山間過疎地域における生活環境の実態とITによる地域生活機能の支援
第4章 島根県過疎集落における地域生活機能
第1節 過疎地域における生活機能に関する分析視点
第2節 島根県の過疎地域
第3節 調査の目的と方法
第4節 回答者の属性と職業
第5節 生活機能・生活環境の評価と生活圏
第6節 過疎集落における生活機能研究の課題
第5章 地域生活機能とITによる支援
第1節 はじめに
第2節 ITと地域生活
第3節 地域へのITネットワーク技術の応用(大規模事例)
第4節 地域調査結果
第5節 結 論
第III部 ソーシャル・キャピタルとコミュニティの生活環境・地域生活機能
第6章 ソーシャル・キャピタルと農山村地域の生活環境
第1節 ソーシャル・キャピタルとは何か
第2節 ソーシャル・キャピタル研究の問題点
第3節 ソーシャル・キャピタルと農村社会研究
第4節 ソーシャル・キャピタル研究におけるミクロ−マクロ問題
第5節 人口減少地域の集落における生活維持活動とソーシャル・キャピタル
第7章 ダム建設による水没集落の再編成
島根県雲南市木次町槻之屋集落の事例
第1節 はじめに
第2節 エージェントと社会的紐帯
第3節 尾原ダムの概要と地元の動き
第4節 槻之屋集落における取り組みの概要
第5節 槻之屋集落における取り組みの意義と社会的紐帯,ソーシャル・キャピタル
第8章 同郷団体による都市農村交流コミュニティの形成
近畿地方在住者によるNPO法人「ふるさと力」の活動と徳島県三好地方の事例
第1節 はじめに
第2節 NPO法人「ふるさと力」の成立経緯と住宅地建設活動の概要
第3節 「ふるさと力」と「三好タウン愉流里」の活動・機能の意義
第4節 おわりに
第9章 千里ニュータウンにおける市民活動とソーシャル・キャピタル
第1節 はじめに:本章のねらい
第2節 千里ニュータウンの歴史と概要
第3節 高齢化と住居・建造環境の老朽化
第4節 その他の機能およびアメニティの衰退
第5節 千里ニュータウンの中のコンフリクト
第6節 千里ニュータウンの中のソーシャル・キャピタルと市民の力
第7節 タウン・リニューアルおよび都市の社会的スプロール
第8節 結語:再実験都市としての千里ニュータウン
第10章 結論:山間地域とソーシャル・キャピタルの事例から学ぶこと
第1節 本書の論点の整理
第2節 今後の課題と展望
参考文献類
あとがき
索引
著者紹介
堤 研二(つつみ けんじ)
1960年3月,福岡県大牟田市生まれ。
1986年3月,九州大学大学院文学研究科修士課程修了。博士(文学)。
国立佐世保工業高等専門学校・島根大学法文学部勤務を経て,現在,
大阪大学大学院文学研究科人文地理学講座および共生文明論講座教授(兼務)。
専門は社会経済地理学。主たる調査フィールドは,山村,炭鉱閉山地域,
ニュータウンなど。地域社会変動の理論的研究にも関心を寄せている。