通信産業の経済学 R1

著者名
実積寿也
価格
定価 3,400 円 (税別)
ISBN
978-4-7985-0264-9
仕様
A5判 並製 356頁 C3033
発行年
2019年10月
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内容紹介

本書は、基本的なミクロ経済学の知識を有する読者を対象に、通信産業やネットビジネスの経済学的な特質についてとりまとめたものであり、前著『通信産業の経済学2.0』の内容を現行化するとともに、発展を続けるインターネット業界に関連する議論をさらに充実させたものである。

全体は四部から構成され、第1部(通信と政府の役割)において、本書の理解のベースとなる経済理論を復習するとともに、特殊な財である情報財の特質について学ぶ。第2部(通信サービスの経済特性)では、通信産業の需要面・供給面における特殊性を解説する。第3部(通信市場と規制)では、1985年の市場開放から35年を経て、徐々に、しかし大胆にその方向や手法を変化させてきた通信市場に対する介入政策の理論的背景について説明している。第4部(通信産業からネット産業へ)では、ネットワーク整備、ネットビジネス、デジタルトランスフォーメーション、ネットワーク中立性といった新たな話題について分析を加える。

技術進歩が著しく速い通信分野を取り扱う本書では、取り上げた具体例が陳腐化するスピードは極めて速い。本書が前著に引き続き、通信経済学という分野に対する読者の知的好奇心を少しでも掻き立て、広大なネットビジネスを進む道標となることを期待したい。

目次

 第3版はしがき
 初版はしがき
 
   第1部 通信と政府の役割
 
第1章 市場に対する政府の関与

 
 1. はじめに
 2. 市場メカニズムが達成するもの
  2.1. 市場モデル
  2.2. 家計の意思決定
  2.3. 企業の意思決定
  2.4. 競争均衡
  2.5. 効率性と公平性
 3. 市場メカニズムの限界と解決策
  3.1. 「夜警国家」的モデル
  3.2. 効率性の前提条件
  3.3. 効率性の失敗(狭義の「市場の失敗」)
  3.4. 公平性の失敗
 4. 通信分野への政府介入
  4.1. 市場は失敗しているのか?
  4.2. 規制の根拠
  4.3. 規制のコスト
 5. 政府介入の変遷
  5.1. 産業育成(復興)
  5.2. 事業規制
  5.3. 競争政策
  5.4. 効率性と社会的便益
 引用文献
 
第2章 産業政策の基礎理論
 
 1. はじめに
 2. 産業構造政策
  2.1. 産業構造の変化
  2.2. 望ましい産業構造
  2.3. 幼稚産業保護
  2.4. 産業転換・産業調整
 3. 産業組織政策
  3.1. 競争至上主義の是非
  3.2. わが国の通信産業政策
 4. 戦略的貿易政策
  4.1. マーシャルの外部性
  4.2. 補助金競争
 引用文献
 
第3章 情報の価値
 
 1. はじめに
 2. 市場メカニズムにおける情報
  2.1. 情報の不完全性
  2.2. 情報の非対称性:影響と対策
  2.3. モラルハザード問題
  2.4. 不確実性下の消費者行動
 3. 経済財としての情報
  3.1. 財の特殊性
  3.2. 情報財の価値
  3.3. 独占力の源としてのデータ
 4. 情報財市場
  4.1. 市場構築のための環境整備
  4.2. 個人情報への配慮
  4.3. ミスインフォメーション,ディスインフォメーション
 引用文献
 
   第2部 通信サービスの経済特性
 
第4章 ネットワーク効果

 
 1. はじめに
 2. ネットワーク効果と外部性
  2.1. ネットワーク効果とは
  2.2. 正の効果と負の効果,予測の自己実現性
  2.3. ネットワーク効果による外部性
  2.4. ネットワーク外部性の内部化
  2.5. メトカーフの法則
 3. 閾値加入者数とネットワーク規模
  3.1. 閾値加入者数
  3.2. ネットワーク規模の決定
  3.3. 安定均衡と不安定均衡
 4. ネットワークの均衡点
  4.1. 均衡点の数と安定性
  4.2. クリティカル・マス
  4.3. クリティカル・マスによる均衡の性質
 5. 市場加入需要曲線
  5.1. 需要曲線の導出1
  5.2. 需要曲線の導出2
  5.3. 数値例
 引用文献
 
第5章 ネットワーク効果の影響
 
 1. はじめに
 2. 通信需要と加入需要
  2.1. 個別通信需要と加入需要
  2.2. 現実の加入需要
  2.3. 個別通信需要と市場通信需要
 3. スタートアップ問題
  3.1. 新規参入事業者の対応
  3.2. 先行している事業者の活用
  3.3. クリティカル・マスの大きさ
 4. 既存事業者への影響
  4.1. 事業経営の非効率性
  4.2. 過剰慣性と過剰転移
  4.3. ユニバーサルサービスの価値
 5. ネットワーク間競争
  5.1. The winner takes all.
  5.2. 複数ネットワークの共存
  5.3. 事業者の具体的な戦略
 引用文献
 
第6章 通信サービスの生産
 
 1. はじめに
 2. 通信ネットワーク
  2.1. 充足の経済,設備の不可分性
  2.2. ネットワークの構造
 3. ネットワークの構築
  3.1. 構築コスト
  3.2. 大規模構築のメリット
  3.3. ネットワークの混雑
  3.4. 費用構造の特徴
 4. 規模の経済
  4.1. 平均費用逓減
  4.2. 規模の経済・不経済
  4.3. 環境変化の影響
 5. 範囲の経済
  5.1. 範囲の経済
  5.2. 費用構造の備えるべき性質
 6. 通信事業の構造
  6.1. 規模の経済と範囲の経済
  6.2. 独占の安定性
  6.3. 自然独占
 引用文献
 
   第3部 通信市場と規則
 
第7章 参入規制と料金規制

 
 1. はじめに
 2. 独占企業の料金設定
  2.1. 独占企業の行動
  2.2. 自然独占の場合
  2.3. 社会的厚生からの評価
 3. セカンドベスト料金
  3.1. 限界費用価格形成
  3.2. 平均費用価格形成
  3.3. 二部料金制
  3.4. ピークロード料金
 4. 参入規制
  4.1. 根拠としての自然独占
  4.2. その他の根拠
 5. わが国における伝統的規制
  5.1. 公正報酬率規制
  5.2. 第一種電気通信事業への参入許可
 引用文献
 
第8章 伝統的規制の限界と解決策
 
 1. はじめに
 2. 伝統的規制をめぐる環境変化
  2.1. 規制のコスト
  2.2. 需要環境
  2.3. 生産環境
  2.4. 政策環境
 3. 伝統的規制の本質的問題点
  3.1. 内部効率化インセンティブへの影響
  3.2. アバーチ=ジョンソン効果
  3.3. 規制運用面の非効率性
 4. インセンティブ規制
  4.1. 免許入札制
  4.2. ヤードスティック競争
  4.3. 価格上限規制
 5. コンテスタブル市場
  5.1. コンテスタビリティ理論
  5.2. コンテスタビリティ理論の展開
 引用文献
 
第9章 新規参入の促進
 
 1. はじめに
 2. 新規参入
  2.1. 競争形態と不可欠設備
  2.2. 設備競争とサービス競争
  2.3. 投資の階段
  2.4. 接  続
 3. 既存ネットワークの利用料金
  3.1. 最適料金
  3.2. LRIC方式の既存事業者への影響
  3.3. 価格スクイズ
 4. 内部相互補助
  4.1. レバレッジ
  4.2. 不当廉売への対処
 5. 標 準 化
  5.1. デジュリvs. デファクト
  5.2. 標準化戦争
  5.3. スイッチングコスト
  5.4. ロックイン下の競争
 6. 新規参入事業者の保護・育成
  6.1. 幼稚産業保護論の応用
  6.2. 直接支援と間接支援
 引用文献
 
   第4部 通信産業からネット産業へ
 
第10章 ネットワークの整備

 
 1. はじめに
 2. ネットワーク整備の価値
  2.1. 経済へのインパクト
  2.2. 利用者側の条件整備
 3. ネットワークの最適規模
  3.1. 専用部分と共用部分
  3.2. 技術進歩と事業者協調
  3.3. ネットワークの混雑
  3.4. 提供条件の影響
 4. 周波数オークション
  4.1. 電波という資源
  4.2. 配分方法の比較
  4.3. 効率解達成の条件
  4.4. ルールの選択
  4.5. 公平性・収入最大化の視点
 引用文献
 
第11章 ネット産業の経済学
 
 1. はじめに
 2. 最適事業範囲
  2.1. 取引費用経済学
  2.2. 情報化の影響
  2.3. 垂直統合の効率性
 3. ビジネスモデルの模索
  3.1. 無料モデル
  3.2. 無料サービスの価格
  3.3. 両面市場
  3.4. 定額料金制と従量料金制
 4. ビッグデータ
  4.1. デジタル化とビッグデータ
  4.2. データ駆動型社会
  4.3. 必要な政策介入
 引用文献
 
第12章 ネット産業の政策課題
 
 1. はじめに
 2. デジタルトランスフォーメーション
  2.1. 産業構造の変化とSociety 5.0
  2.2. 競争へのインパクト
  2.3. 労働市場へのインパクト
 3. オンライン・プラットフォーム
  3.1. プラットフォーム事業者
  3.2. プラットフォーム独占
  3.3. 経済システムへのインパクト
 4. ネットワーク中立性
  4.1. 問題の本質
  4.2. トラフィック混雑への対処
  4.3. ネットワーク事業者の市場支配力
  4.4. 通信品質リテラシーの確保
  4.5. 「ネットワーク中立性」からの中立性
 5. ブロードバンドエコシステムが求める中立性
  5.1. ネットワーク中立性の進化
  5.2. 様々な中立性
 引用文献
 
索  引

著者紹介

実積寿也(じつづみ としや)
 
中央大学総合政策学部教授
郵政省(現、総務省)、長崎大学、日本郵政公社、九州大学を経て、2017年より現職
東京大学法学部卒業(法学士)、New York University経営大学院修了(MBA[Finance])、
早稲田大学大学院国際情報通信研究科修了(博士[国際情報通信学])
安倍フェロー(2006年度)としてコロンビア大学CITIにてvisiting scholar
専門は通信政策、インターネット政策、および通信経済学
 
主要著書
『OTT産業をめぐる政策分析  ネット中立性、個人情報、メディア  』(共著;2018年、勁草書房)
『ネットワーク中立性の経済学  通信品質をめぐる分析  』(2013年、勁草書房)
『IT投資効果メカニズムの経済分析  IT活用戦略とIT化支援政策  』(2005年、九州大学出版会)
 
所属学会
 情報通信学会、情報法制学会、公益事業学会、日本地域学会、International Telecommunications Society

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