インドの税制改革財政連邦主義の転換と財・サービス税

著者名
山本盤男
価格
定価 3,800円(税別)
ISBN
978-4-7985-0289-2
仕様
A5判 上製 188頁 C3033
発行年
2020年9月
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内容紹介

世界の新興経済国として存在感を増しているインドは、13億の人口、37の州・連邦直轄領、28万の地方政府からなる連邦国家である。インドは今日、世界第5位の経済規模となった経済成長を達成したものの、激動する世界経済や政権交代による政策転換により、財政構造や税制の改革を迫られている。本書は近年のインドの経済や財政の沿革を概観するとともに、2016年の歴史的な税制改革について、実現に至った過程や、それが財政・税制に及ぼす効果や役割を、インド政治の動向も踏まえながら丹念に分析するものである。

インドでは財政の長期的な課題であった財政赤字削減のために、豊かな税源が必要とされてきた。しかしながら主要な税源である消費税制は、憲法によって財政自主権を保証された州と中央の複雑で非効率な課税と、国内の共通市場形成の遅れの要因となっており、持続的な経済成長のためにもインド固有の財政と税制を踏まえた税制改革が長年にわたり希求されてきた。

そのようななか、国民民主同盟の現モディ政権のもと抜本的な税制改革として、2016年に財・サービス税(Goods and Services Tax:GST)が導入された。このGSTは包括的な消費型の二元付加価値税であり、中央と州の税体系と税収構造を転換するものであった。またこの改革においては中央と州が協議・決定する連邦機関としてGST協議会が創設され、税収と制度の安定化が図られている。これは地方分権化への制度変更もあった財政連邦主義を、連邦優位の協力的連邦主義の推進により転換することを意味するものであり、法的枠組みによる財政健全化の施策と中央と州間財政関係の制度変更とともに重要な役割を果たした。

世界第3位の経済大国を目指す現モディ政権は、インドの財政制度を、協力的連邦主義に基づく新たな財政連邦主義へ変革しており、本書はその実現に必要な税制と財政制度の改革課題を的確に展望している。連邦国家インドの経済や財政を理解するうえでの必読書。

目次

 インドの行政区分図
 現代インドの財政関連略年表
 略語一覧
 
序 章 本研究の課題
 
 第1節 研究の目的
 第2節 研究の視点と方法
  税制改革の視点/財政健全化の視点/財政連邦主義の視点/研究方法
 第3節 本書の章構成
 第4節 研究の意義
 
第1章 2010年代のインドの経済と財政
 
 第1節 インドの政治
 第2節 インドの経済
  経済成長/産業部門別構成
 第3節 2010年代の財政
  財政の概要/財政収支/債務/補助金
 第4節 租税制度
  中央と州の税制/中央と州の税収配分
 第5節 中央と州の財政関係
  中央から州への財源移転/州の中央への依存
 
第2章 財政健全化と財政責任・予算管理法
 
 第1節 財政責任・予算管理法と財政赤字
  財政責任・予算管理法の概要/財政赤字の動向
 第2節 第13次財政委員会報告
 第3節 2012年のFRBM法修正
 第4節 財政健全化工程表に関する委員会報告
 第5節 財政責任・予算管理法検討委員会報告
  FRBMRC設置の背景と委託事項/勧告/反対意見/FRBM法の修正/
  勧告の意義
 第6節 FRBM法修正の評価
  2010年代の財政健全化/FRBM法修正の問題点/FRBM法修正の評価
 
第3章 第14次財政委員会と財政連邦主義の転換
 
 第1節 第14次財政委員会報告の概要
  委託事項/課題とアプローチ/勧告の要旨
 第2節 勧告の特徴と州配分の変化
  特徴/州配分の変化/連邦政府の勧告への対応
 第3節 勧告の評価
  財政当局の評価/州の財政オートノミーと中央の財政スペースとの平衡/
  州への財源移転の動向/14FC勧告の評価
 
第4章 財・サービス税の課税システム
 
 第1節 統一進歩同盟政権下のGSTの制度設計
  第1次ディスカッションペーパーの作成経過/第1次ペーパーのGSTモデルと
  連邦政府財務省コメント
 第2節 第1次ペーパーのGSTモデルの課題
  第13次財政委員会のタスクフォース報告/国際的視点によるGST案/
  第1次ペーパーのGSTモデルの課題
 第3節 国民民主同盟政権下のGSTの制度化
 第4節 GSTの課税システムの特徴
 
第5章 財・サービス税の効果と課題
 
 第1節 GST導入時の評価
  連邦財政当局の見解/RBIの見解/協力的連邦主義と競合的連邦主義
 第2節 GST実施時の税収不足と安定化
  GST実施時の効果/税収不足と制度の安定化/連邦財政/州財政
 第3節 GSTの効果
  GSTの税収/GSTの州・連邦直轄領別の税収と納税者/中央税収とGST税収/
  州税収とGST税収
 第4節 制度安定化の課題
 
終 章 協力的連邦主義とGST協議会
 
  財政連邦主義の転換/協力的連邦主義からの乖離/GSTとGST協議会の評価/
  協力的連邦主義とGST協議会
 
 あとがき
 引用文献
 索 引

著者紹介

山本盤男(やまもと いわお)
 
1978年、大阪府立大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。
1993年より九州産業大学経済学部教授(2018年3月まで)。
現在、九州産業大学名誉教授。博士(経済学、大阪府立大学)。
専攻は財政学・粗税論。
 
主な著書
『インドの構造調整と税制改革』中央経済社、1997年
『連邦国家インドの財政改革の研究』九州大学出版会、2007年

学術図書刊行助成

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