分権国家スイスの制度改革 連邦・州政府の役割分担と財政調整

シリーズ名
久留米大学経済叢書23
著者名
世利洋介
価格
定価 5,940円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0372-1
仕様
A5判 上製 250頁 C3033
発行年
2024年4月
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内容紹介

スイスにおいて連邦主義の新たな活性化策(「連邦政府とカントンの間の役割分担と財政調整の再構築」)が2008年から実施されている。その四支柱は、連邦政府とカントン(州政府)の間での役割分担の再構築、連邦政府とカントンの間の垂直的連携、州政府間の水平的連携、垂直的・水平的財政調整である。本著では、制度の紹介と初期成果の分析に焦点を置いている。

改革に当たっての基本的な方針は、カントンの主体性の確保、補完性の原則、財政一致の原則(意思決定者・受益者・費用負担者を一致させること)、中立性の原則(四支柱の変革に伴う負担増減を連邦政府とカントン全体のそれぞれのレベルで中立化を図ること)等である。これら諸原則がどのように制度に組み込まれたか、さらに初期成果の分析も加えて考察している。

スイスでは「世紀の国家的プロジェクト」とみなされている改革に着手された背景には、カントンの権限が重視される制度上の枠組みにありながら、実態としては従来、連邦政府の権限が徐々に強化されてきた経緯がある。こうした中で、スイスの新たな活性化策が具体的にどう展開されようとしているのか、各種公的文書を第一資料として分析している。

目次

 はしがき
 
第1章 NFAの基本的枠組み
 
 Ⅰ 概要  連邦主義の活性化策  
  1 背景
   スイス連邦主義の問題点/執行連邦主義に伴う集権化
  2 NFA成立の経緯
  3 改革上の原理と対策群
   目的・手段/NFA改革の原理
 Ⅱ 政府間役割分担上の枠組み
  1 役割分担の問題点と再編成  第一対策群  
   NFA前の役割分担の問題点/再構築の基準
  2 権限の専属化
   連邦政府の専属事項/カントンの専属事項
 Ⅲ 財政上の枠組み
  1 財政中立の原則と「全体決算表」
   財政中立の原則/全体決算表
  2 激変調整
  3 コンセンサスの形成枠
 おわりに
 
第2章 垂直的連携  新たな協働・財源形態  
 
 Ⅰ 協働・財源形態
  1 従来の協働・財源形態  旧補助金制度の問題  
  2 新たな協働・財源形態
 Ⅱ 連携任務
  1 「連携任務」概念
  2 法的根拠
  3 集権化の要素
 Ⅲ プログラム協定制度
  1 「プログラム協定」概念
  2 法的根拠
   連邦憲法上の根拠/補助金法の改正
  3 カントンの主体性と集権化の要素
   特別法の運用面での集権化の要素
 おわりに
 
第3章 プログラム協定の成果  プログラム協定鑑定報告を中心に  
 
 Ⅰ プログラム協定の導入状況
 Ⅱ プログラム協定の評価と問題点
  1 評価  アンケート結果より  
  2 補助金形態との関係
 Ⅲ 総括と改善点
  1 総括  鑑定の共通点  
  2 改善点
 おわりに
 
第4章 水平的連携  負担調整を伴うカントン間連携  
 
 Ⅰ NFAにおける水平的連携
  1 基本的な考え方
   従来の水平的関係/連邦構造上の中心的問題/基本的な考え方
  2 NFA改革の原理との関連
   補完性原理との関連/カントンの主体性との関連/財政統一原則との関連
 Ⅱ 「負担調整を伴うカントン間連携」の法的根拠
  1 連邦憲法第48a条
   第48条/第48a条
  2 FiLaG
 Ⅲ カントン間枠協定
  1 基本的な考え方
  2 構成と連携形態
   連携形態
  3 負担調整
  4 結節点としての機能
   カントン間機構/紛争処理機能/議会の関与の限定
 おわりに
 
第5章 財源調整制度
 
 Ⅰ 導入の背景
  1 執行連邦主義
  2 従来の財政調整制度  概要と問題点  
   財政移転と財政力関連額/配分上の問題/財政力指数の問題/調整効果
 Ⅱ 財源調整制度の概要
  1 法的根拠
   連邦憲法/FiLaG
  2 新旧財政調整制度の比較
 Ⅲ 財源調整の構造
  1 財源ポテンシャルと財源指数
   財源ポテンシャル/技術的側面/財源指数/技術的側面/標準的税収入
  2 拠出・交付算定式
   拠出算定式/交付算定式
  3 モデル上の調整効果
 おわりに
 
第6章 財源調整の調整効果
 
 Ⅰ 財源調整の算定
  1 財源調整の構成要素
   財源ポテンシャルと財源指数/財源指数/標準的税収入/拠出と受取
  2 原資
 Ⅱ 財源ポテンシャルと財源指数
  1 財源ポテンシャルの算出
  2 財源指数の算出
  3 標準的税収入
   標準的税収入
 Ⅲ 調整効果
  1 給付能力の格差の緩和
  2 最低限の財源保障
 おわりに
 
第7章 負担調整制度
 
 Ⅰ 負担調整の概要
  1 NFAにおける位置付け
  2 概念「特別負担」
  3 法的根拠
   連邦憲法上の根拠
 Ⅱ 地理的地勢的負担調整
  1 部分指標と負担指数
  2 標準的特別負担と交付算定
 Ⅲ 社会人口的負担調整
  1 人口構造に基づく標準的特別負担
  2 中核都市の標準的特別負担
   中核都市問題の算定式
 Ⅳ 交付算定
   交付総額の割当
 おわりに
 
第8章 負担調整の調整効果
 
 Ⅰ 部分指標と標準的特別負担
  1 地理的地勢的負担調整
  2 社会人口的負担調整
   人口構造問題/中核都市問題
 Ⅱ 負担調整のカントン間配分状況
  1 地理的地勢的負担調整
  2 社会人口的負担調整
 Ⅲ 負担調整のカントン間比較
  1 負担調整全体の配分状況
  2 負担指数と財源指数の相関
   GLA/人口構造問題に関するSLA/中核都市問題に関するSLA/
   コンセンサス基準としての負担調整
 おわりに
 
 参考文献
 あとがき
 索引

著者紹介

世利洋介(せり ようすけ)
 
明治大学政治経済学部卒、明治大学大学院政治経済学研究科修士課程修了、九州大学大学院
経済学研究科修士課程修了。久留米大学商学部講師、久留米大学経済学部助教授、久留米大学
経済学部教授を経て現在、久留米大学名誉教授。

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