ディルタイから教育実践へ アクティブラーニングの源流

著者名
森 邦昭
価格
定価 5,720円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0187-1
仕様
A5判 上製  366頁 C3037
発行年
2016年9月
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内容紹介

ディルタイ(1833-1911)は、「あらゆる真の哲学の華と目標は、最も広い意味での教育学、人間の陶冶論である」「現代の批判的な立場での哲学者の最後の言葉は、教育学である。というのも、あらゆる思考は行為のためだからである」と考えていた。その彼の精神科学によれば、人間が何かを学習するというのは、「抵抗経験」を軸にして「生の範疇」を通り抜けていくような仕方で「生の自己分節化」を生じさせることではないかと考えられる。さらに彼の「体験=表現=理解」の解釈学的循環の構造は、アクティブラーニングの成立要件そのものではないかとも考えられる。そのように考えれば、アクティブラーニングの理論と実践は今日において突如として現れたのではなく、理論的にも実践的にも、遅くともディルタイの時代から模索され続けているのはたしかである。これからの教育実践を真に実り豊かなものにしていくためにはディルタイの考え方に基づいたらよいのではないかということから発した本書の旅は、奇しくも同時にアクティブラーニングの一つの源流をたどる旅でもあった。

目次

  はじめに
 
 序章 ディルタイと精神科学的教育学の理念
 
  第一節 ディルタイの思想と『ディルタイ全集』
  第二節 ディルタイ研究所の設立と課題
  第三節 精神科学の歴史と理論
  第四節 理解概念の意味
  第五節 ディルタイ解釈の対立軸
  第六節 精神科学的教育学の理念
 
第一部 精神科学から見た知識習得とその条件
 
 第一章 精神科学から見た知識概念
 
  第一節 精神科学における知識概念
  第二節 学習指導要領における知識概念
  第三節 唯名論的知識観と批判哲学的知識観
 
 第二章 精神科学から見た知識習得
 
  第一節 超越問題と学習
  第二節 知識か考える力か
  第三節 学力・思考力とは何か
  第四節 新しい学習論の試み
  第五節 精神科学から見た「わかる」ということ
 
 第三章 自然科学から見た知識習得
 
  第一節 学習における本気
  第二節 シナプス可塑性
  第三節 例としての英語学習法
 
 第四章 精神科学から見た学習するということ
 
  第一節 知覚の知的性格
  第二節 意識事実と認識
  第三節 生の連関
  第四節 生の範疇
  第五節 学習における本質的作用
 
第二部 精神科学から見た授業展開とその条件
 
 第五章 認識の本質と授業展開
 
  第一節 授業とは何か
  第二節 教育学理論の成立
  第三節 ピグマリオン効果
  第四節 能動的な聞き方
  第五節 わたしメッセージ
 
 第六章 事実認識と授業展開
 
  第一節 いじめを克服する道徳授業
  第二節 道徳と事実認識
  第三節 訴えかける道徳授業の可能性
 
 第七章 読み物資料を用いた道徳授業
 
  第一節 ジレンマ資料の問題点
  第二節 読み物資料から何を学ぶべきか
  第三節 道徳授業で何が問題か
 
 第八章 道徳的ジレンマとどう向き合うか
 
  第一節 正 義 論
  第二節 神経哲学
  第三節 共 感 脳
  第四節 ディルタイ心理学
 
 第九章 授業展開をどう構想するか
 
  第一節 フンボルト理念
  第二節 ゼミナールと実験室
  第三節 学びの空間の設計
 
  おわりに
  参考文献
  人名索引/事項索引

著者紹介

森 邦昭(もり くにあき)
 
1958年 佐賀県生まれ
1981年 九州大学教育学部卒業
1988年 九州大学大学院教育学研究科博士後期課程単位修得退学
1988年 福岡女子大学文学部講師,90年同助教授,2004年同教授
2011年 福岡女子大学国際文理学部教授
2015年 博士(教育学)(九州大学)
 
主要業績
『近代化と教育  筑前竹槍一揆から学校教育の必要性を考える』デザインエッグ社,2015
『生育環境と教育  少年事件から教育のあり方を考える』デザインエッグ社,2015
『後に続く女性たちへ  秋枝蕭子・福岡女子大学名誉教授からのメッセージ』共編,九州大学出版会,2015
「フンボルト理念と教養」『ディルタイ研究』第23号,2012
「ボーフム大学におけるディルタイ研究」『ディルタイ研究』第17号,2006
『〈道徳〉は教えられるのか?』分担執筆,教育開発研究所,2003
など。

学術図書刊行助成

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