博士号につながる「教科教育実践学」論文の書き方 院生・修了生・教員が明かすアクセプトの秘訣

著者名
菊地 章 編/
兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科
共同研究プロジェクト(W)研究グループ 著
価格
定価 2,640円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0297-7
仕様
A5判 並製 164頁 C3037
発行年
2020年12月
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内容紹介

巷には論文執筆指南の書籍が数多く溢れています。しかしながら、博士課程の学生はそれらを参考にしてもなかなか論文が書けません。なぜでしょうか。それは、苦労なく論文を書ける人が指南書を書いているからです。

学校教育系博士課程の学生は、学校教員の職を持ったまま入学する学生や、大学院の修士課程や専門職学位課程を修了して進学する学生がほとんどです。難関の博士課程の入試を突破した優秀な学生さんにも関わらず、3年間での博士の学位取得者は思ったほど多くありません。博士の学位取得の要件である査読有学術論文が書けないのです。

博士課程学生を指導する際に気になることがあります。博士の学位を取得することのみを目的として論文を書く学生が多く、学校教育実践を通して未来の日本や世界を支える子ども達の能力を伸ばすために論文を書こうとする学生が少ないことです。ほとんどの学生は、研究の目的を十分に設定できず暗中模索している状態です。

本書は、博士課程の現役学生や修了生が自分の経験を踏まえてどのように論文の執筆・投稿・査読通過の試練を乗り越えてきたかを含め、教科教育実践学の視点から今後の博士号の取得のために学術論文をどのように書けばよいのかについてまとめたものです。編者は博士課程学生指導の経験とともに学会誌編集委員長の経験もあり、投稿する側の気持ちと査読する側の気持ちの両方を理解しているつもりです。ぜひ本書を参考にして、読者に読まれる論文、査読者に理解される論文を書いて戴きたいと思います。

目次

 まえがき
 
序  章 教科教育実践論文執筆の意義
 
第1章 学術論文執筆の基本
 
 第1節 学術論文の基礎知識
  1.学術論文執筆の目的
  2.学会とは
  3.論文のカテゴリー
  4.学術論文の投稿から掲載の流れ
  5.査読システムと投稿のタイミング
 第2節 学術論文の執筆準備
  1.投稿のための不断の努力
  2.投稿準備としての学会発表
 第3節 学術論文の執筆
  1.読者に読まれる学術論文執筆
  2.査読者に理解される学術論文執筆
 第4節 学術論文の投稿から掲載まで
  1.学術論文投稿時の注意点
  2.査読結果への対応と論文の掲載
 
第2章 教育研究の進め方と論文執筆のポイント
 
 第1節 教科教育研究のタイプと論文執筆のポイント
  1.教科教育に関する研究領域
  2.論文の構成
  3.論文執筆のポイント
  4.研究を始めるにあたって
 第2節 データ分析の手法と示し方
  1.データ分析の概要
  2.統計的仮説検定の手法
  3.その他の分析手法と多変量解析
  4.統計に関する論文執筆上のポイント
  5.質的研究の進め方
 第3節 研究倫理上の注意点
  1.不正行為の防止
  2.倫理的配慮
  3.研究倫理遵守の大切さ
 
第3章 人文社会系の教育実践論文執筆事例(国語教育)
 
 第1節 国語教育独自の問題点
 第2節 論文執筆の視点
  1.タイトルの付け方
  2.論文の構成について
  3.図・表について
  4.査読結果への対応
 第3節 博士課程での研究
  1.博士論文作成の準備
  2.学会での発表
  3.博士課程での研究と博士論文の完成
 第4節 論文査読への回答事例
  1.査読者からの修正内容に対する回答事例
  2.2名の査読者への回答事例
 
第4章 自然科学系の教育実践論文執筆事例(算数・数学教育)
 
 第1節 算数・数学教育独自の問題点
 第2節 論文執筆で大切にしてきたこと
  1.序文
  2.方法
  3.結果・分析
  4.考察
  5.その他
 第3節 論文査読への回答事例
 第4節 結びに代えて
 
第5章 芸術科学系の教育実践論文執筆事例(音楽教育)
 
 第1節 音楽教育独自の問題点
 第2節 論文執筆の視点
  1.研究フィールドの吟味
  2.研究方法の検討
  3.論文作法の理解
 第3節 論文作成の心がまえ
 第4節 論文作成の具体
 第5節 まとめ
 
第6章 応用科学系の教育実践論文執筆事例(技術理論考察)
 
 第1節 技術教育独自の理論的側面の問題点
 第2節 円滑な研究遂行に向けて
  1.研究のマイルストーン
  2.研究テーマの選定
  3.研究アプローチの模索
  4.結果及び考察をまとめる
  5.今後の課題を見出す
 第3節 論文執筆から採択までの道のり
  1.論文投稿に向けて
  2.査読対応の事例
 第4節 博士課程在籍時の心得
 
第7章 応用科学系の教育実践論文執筆事例(技術授業実践)
 
 第1節 技術教育独自の実践的側面の問題点
 第2節 論文の構想から執筆まで
  1.論文の構想とオリジナリティ
  2.論文の執筆
  3.論文のまとめ
 第3節 論文査読への回答事例
  1.論文の査読結果を初めて受け取って
  2.査読回答の具体例
 
第8章 総合科学系の教育実践論文執筆事例(情報教育)
 
 第1節 情報教育独自の問題点
 第2節 論文執筆の視点
  1.タイトルの付け方
  2.論文の構成について
  3.図・表について
 第3節 査読結果への対応
  1.査読者からコメントが返ることを想定した論文執筆
  2.回答書の書き方について
 第4節 博士課程での研究
  1.博士論文作成の準備
  2.学会での発表
  3.博士課程での研究と博士論文の完成
 第5節 論文査読への回答事例
  1.査読者からの修正案に従わなかった場合の回答事例
  2.2名の査読者への回答事例
  3.査読者の理解と齟齬がある場合の回答事例
  4.指摘内容に対する修正案提示の回答事例
  5.査読者の意図を取り入れた修正案の回答事例
 
終  章 教科教育実践論文の重要性
 
 あとがき
 索 引

著者紹介

<編 者>
菊地 章(きくち あきら)
 
昭和54年 徳島大学助手
昭和61年 鳴門教育大学講師
昭和63年   〃   助教授
平成10年   〃   教授
以後、同大学において情報処理センター所長、高度情報研究教育センター所長、地域連
携センター所長、自然・生活系教育部長を歴任。
平成8年より併任する兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科において、代議員、副研
究科長を歴任。
その間、一般社団法人日本産業技術教育学会の理事、編集委員長、副会長、会長を歴任。
令和2年4月より鳴門教育大学特命教授・名誉教授、兵庫教育大学特任教授。
工学博士(大阪大学)
 
<執筆者> ※以下において、「博士課程」は兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科博士課程を指す。
秋田美代(あきた みよ)第4章
鳴門教育大学大学院学校教育研究科教授
 
小川容子(おがわ ようこ)第5章
岡山大学大学院教育学研究科教授
 
菊地 章 序章、第1章、第7章、第8章、終章
 
世良啓太(せら けいた)第6章
博士課程修了、奈良教育大学専任講師
 
仙田真帆(せんだ まほ)第5章
博士課程3年、岡山大学所属
 
千種彰典(ちぐさ あきのり)第3章
博士課程3年、鳴門教育大学所属
 
長井映雄(ながい あきお)第8章
博士課程修了、和歌山県立和歌山高等学校教諭
 
西山由紀子(にしやま ゆきこ)第7章
博士課程2年、鳴門教育大学所属、佐賀市立城西中学校教諭
 
村井万里子(むらい まりこ)第3章
鳴門教育大学大学院学校教育研究科教授
 
森山 潤(もりやま じゅん)第2章、第6章
兵庫教育大学大学院学校教育研究科教授
 
吉村 昇(よしむら のぼる)第4章
博士課程3年、鳴門教育大学所属、熊本大学准教授

推薦文

日本教育実践学会会長(佛教大学教授/兵庫教育大学連合大学院元研究科長) 松村京子氏

本の帯に、「指南書を読んでも書けないあなたへ」とあり、「書けない苦しみを知る人たちが書いた論文執筆ガイドの決定版!」と記されています。何とユニークな帯でしょう。本書を手に取ってみると、なるほど。本書には、論文が学術誌に掲載されて、博士の学位をとった人たちの体験談が載っていて、論文投稿時の査読者とのやり取りが具体的に書かれていました。良い学術雑誌に投稿して、査読者から適切な指摘を受けること、そしてそれを積み上げていくことが、論文を書く能力を高めることにつながると思います。実際、私もそのようにしてやってきていますし、常々、私が指導している学生にも言っていることです。さらに、査読者とのやり取りを多く経験していることは、査読コメントへの対応だけでなく、次の研究計画を立てるときにも役立ちます。しかし、残念ながら、そのようになるためには時間がかかります。一人で何本も論文を書き、査読者の意見をもらう機会をもつことが必要だからです。そこで、特に、論文の投稿経験がない方や少ない方たちには、本書の中の査読者とのやり取りの具体例は重要です。本書に目を通していただき、査読者からはどのようなことが指摘されるのかを頭において、原稿を仕上げられることをお勧めします。

一般社団法人日本産業技術教育学会会長(信州大学教授)村松浩幸氏
 

「あとがき」にあるように、博士号は、権威の象徴としてのものから、研究者への入り口へと変わってきている。しかし、それでも博士の学位の取得には大変な苦労を伴う。自分自身を振り返っても大変であった。本書はそうした多くの先達の経験、知見をまとめ上げ、「教科教育実践学」の博士論文を執筆する方に必読のガイドに仕上がっている。

教育実践論文はその言葉通り、教育を実践した内容をまとめて世に出した成果である。文部科学省は問題解決能力の育成を全教科で打ち出しているが、本書籍は教科架橋型教科教育実践学の構築の流れの中で生じたものである。特に、一般的な書き方のみならず、人文社会系、自然科学系、芸術科学系、応用科学系、さらに総合科学系と、各領域の独自性にも対応している点は特徴的である。その中には、論文査読への回答事例といった、従来、研究室内のいわば企業秘密的な内容も示されている。同時に博士課程学生の苦労話も伴って網羅されており、博士論文を執筆する方のみならず、教育関係の研究者が論文を執筆する際の座右の書ともいえる書籍であろう。

本書籍の編者は学会の編集委員長経験者であり、また博士課程指導の経験者でもある。学会賞(論文賞)も何度か受賞しており、投稿者の気持ちも分かり査読者の気持ちも分かるため、まさに論文の書き方の書籍の編者・著者として適任である。

博士論文を執筆する方のみならず、教育関係の研究者、学生の皆さんも含め、本書を推薦する。本書を参考に、「10年後の教育を作る」多くの教育実践論文が生まれることを期待したい。

学術図書刊行助成

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