学びを広げる教科の架け橋 教科架橋型教科教育実践学の構築

著者名
菊地 章 編/
兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科
共同研究プロジェクト(W)研究グループ 著
価格
定価 4,950円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0298-4
仕様
A5判 上製 274頁 C3037
発行年
2021年2月
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内容紹介

教員養成系大学・学部では、学校教育実践学や教科教育実践学の考え方を踏まえ、学校教育の質的な改善や改革を目指している。本書は、特に後者の教科教育実践学の充実を目的とし、兵庫教育大学連合学校教育学研究科(博士課程)のプロジェクト研究「研究者養成を踏まえた教科架橋型教科教育実践学の研究」の研究成果の一部として出版するものである。

教科教育実践学は、学校教育での実践を目的として構築されるものであり、また教科を主とした授業展開が意図されるものである。学習指導要領の変化に伴って、教科往還や教科横断等の様々な用語が飛び交っている。往還は行き来することであり、横断は横切ることである。ただ種々の教科を組み合わせることでなく、教科の本質は何か、教科の学習目的を達成するにはどのようにすればよいか、等についての自身の教科を軸とした架橋の観点からの考察が重要となる。

本書では、学問や教育の歴史的な経緯を踏まえ、教科の本質がどこにあり、各教科の学習はどのような視点から行うべきかについて、他の教科の学習成果を踏まえながら自身の教科の学習を進展させる意味で教科架橋の用語を用い、教科架橋型教科教育実践学の構築を目指す。

目次

 まえがき
 
序 章 教科架橋型教科教育実践学の捉え方
 
 第1節 学校教育実践と教員養成
 第2節 教科内の学習内容の融合と教科間の連携
 第3節 教科を架橋させる教科架橋型教科教育実践学
 
第1章 教科架橋型教科教育実践学の基本概念
 
 第1節 学問の発展と分科
 第2節 教科としての学校教育への展開
 第3節 教育・学習の歴史的な変化
 第4節 学習過程に注目した教科架橋型教科教育実践学
 
第2章 国語教育の視点から見た教科架橋型教科教育実践学
 
 第1節 教科架橋型教科教育実践学としての教科の位置付け
 第2節 言語のシステム理論から見た教科架橋型教科教育実践学
 
第3章 歴史教育の視点から見た教科架橋型教科教育実践学
 
 第1節 教科の背景としての学問体系
 第2節 教科架橋型教科教育実践学としての教科の位置付け
 第3節 歴史教育の特徴
 第4節 歴史教育と防災教育の関連性
 第5節 歴史教育から見た教科架橋型教科教育実践学
 
第4章 算数・数学教育の視点から見た教科架橋型教科教育実践学
 
 第1節 教科の背景としての学問体系
 第2節 教科架橋型教科教育実践学としての教科の位置付け
 第3節 算数・数学科と他教科の関連性
 第4節 算数・数学科固有の学習における自己と他者の関連性
 第5節 算数・数学教育から見た教科架橋型教科教育実践学
 
第5章 音楽教育の視点から見た教科架橋型教科教育実践学
 
 第1節 教科の背景としての学問体系
 第2節 教科架橋型教科教育実践学としての教科の位置付け
 第3節 音楽教科と他教科との関連性
 第4節 音楽教科固有の学習における自己と他者との関連性
 第5節 音楽教育から見た教科架橋型教科教育実践学
 
第6章 美術教育の視点から見た教科架橋型教科教育実践学
 
 第1節 教科の背景としての学問体系
 第2節 教科架橋型教科教育実践学としての教科の位置付け
 第3節 図画工作・美術科と他教科との関連性
 第4節 図画工作・美術科固有の学習における自己と他者の関連性
 第5節 美術教育から見た教科架橋型教科教育実践学
 
第7章 技術教育の視点から見た教科架橋型教科教育実践学
 
 第1節 教科の背景としての学問体系
 第2節 教科架橋型教科教育実践学としての教科の位置付け
 第3節 技術リテラシーとSTEM/STEAM教育
 第4節 技術教育から見た教科架橋型教科教育実践学
 
第8章 家政教育の視点から見た教科架橋型教科教育実践学
 
 第1節 教科の背景としての学問体系
 第2節 教科架橋型教科教育実践学としての教科の位置付け
 第3節 家庭科と他教科との関連性
 第4節 教科固有の学習における自己と他者の関連性
 第5節 家政教育から見た教科架橋型教科教育実践学
 
第9章 情報教育の視点から見た教科架橋型教科教育実践学
 
 第1節 教科の背景としての学問体系
 第2節 教科架橋型教科教育実践学としての教科の位置付け
 第3節 情報技術の発展と情報教育の重要性
 第4節 情報教育から見た教科架橋型教科教育実践学
 
第10章 教科架橋型教科教育実践学の学習指導要領との関連性
 
 第1節 学習指導要領(平成29・30年告示)における教科架橋型教育
 第2節 教科架橋型教育の必要性の認識
 第3節 教科架橋型教育を実践するための手立て
 第4節 教科架橋型教育の実現に向けて
 
第11章 教科架橋型教科教育実践学の学校教育実践としての展開
 
 第1節 学習指導要領における教科架橋型教育実践の必要性
 第2節 言語活動の充実における教科等を架橋する視点
 第3節 21世紀型能力における思考力とすべ
 第4節 思考・表現過程の具体化
 第5節 教科等連携を図った授業の実際
 第6節 教科架橋型教科教育実践学の今後の可能性
 
終 章 教科架橋型教科教育実践学構築のまとめと今後
 
 あとがき
 索 引

著者紹介

<編 者>
菊地 章(きくち あきら)
 
昭和54年 徳島大学助手
昭和61年 鳴門教育大学講師
昭和63年   〃   助教授
平成10年   〃   教授
以後、同大学において情報処理センター所長、高度情報研究教育センター所長、地域連
携センター所長、自然・生活系教育部長を歴任。
平成8年より併任する兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科において、代議員、副研
究科長を歴任。
その間、一般社団法人日本産業技術教育学会の理事、編集委員長、副会長、会長を歴任。
令和2年4月より鳴門教育大学特命教授・名誉教授、兵庫教育大学特任教授。
工学博士(大阪大学)
 
<執筆者>
秋田美代(あきた みよ)第4章
鳴門教育大学大学院学校教育研究科教授
 
浅倉有子(あさくら ゆうこ)第3章
上越教育大学大学院学校教育研究科教授
 
上野耕史(うえの こうし)第10章
国立教育政策研究所教育課程調査官
 
小川容子(おがわ ようこ)第5章
岡山大学大学院教育学研究科教授
 
菊地 章 序章、第1章、第9章、終章
 
篠原陽子(しのはら ようこ)第8章
岡山大学大学院教育学研究科教授
 
谷 陽子(たに ようこ)第11章
徳島県立総合教育センター指導主事
 
初田 隆(はつだ たかし)第6章
兵庫教育大学大学院学校教育研究科教授
 
村井万里子(むらい まりこ)第2章
鳴門教育大学大学院学校教育研究科教授
 
森山 潤(もりやま じゅん)第7章
兵庫教育大学大学院学校教育研究科教授

推薦文

一般社団法人日本産業技術教育学会会長(信州大学教授) 村松浩幸氏

近年、従来の領域を越えた横断や連携は、教育界のみならず、学術界さらには社会全体の課題である。学校教育の中では、領域の横断、連携として、教科横断や教科往還等の用語が広がっており、対応した多種多様な教育実践も行われている。その一方、教科横断や教科往還等の理論的な整理は十分とは言い難く、教科横断や教科往還等の用語の本質を議論した書籍も皆無である。こうした課題に対し、理論的な整理をしたのが本書である。

本書の帯に示されているように、本書は、「横断」「往還」そして「架橋」へというステップを踏み、各教科を軸として学齢や教科の枠を越えた学習内容の関連性を考察する「教科架橋型」を提唱し、「教科架橋型教科教育実践学」構築を目指した挑戦的な内容である。その中では、学習の各過程を踏まえながら、各教科での学習の特性を議論している。こうした議論は、教育哲学の歴史的な考察を俯瞰した後に行われ、さらには小学校から高等学校まで、どのような順序で各教科を学べば良いかについても提言する中で、国語、社会、数学、音楽、美術、技術、家庭、情報等の教科における教科架橋型教科教育実践学の理論を構築している。このとき、従来の教科を認識論的に考察する考え方のみでなく、日本学術会議が提唱している認識科学と設計科学の議論を元に、設計科学としての教科の捉え方にも言及しており、新たな教科架橋型教科教育実践学を形作るものとなっている。

本書が提案する教科架橋型教科教育実践学は、今後さらに発展する教科教育実践の基盤となる内容である。本書を、各領域で教育研究に取り組む方々、さらには教育全体に広く取り組まれている方々、それぞれに推薦する。本書を参考に、理論がより精緻化されると共に、多くの優れた教育実践、教育研究が創出されることを期待したい。

日本教育実践学会前副会長(学習院大学教授/兵庫教育大学連合大学院元副研究科長) 梅野正信氏
 

本書は、教科の架橋を志向する教科教育実践学として、教育実践学に新たな地平をきり開いた研究書です。国語教育、歴史教育、算数数学教育、音楽教育、美術教育、技術教育、家政教育、情報教育等の視点から、教科教育学と教科内容学に深く踏み込みながら、教育実践と子どもの姿をふまえて、自己と他者の認識、他教科との接点、教科独自の役割が、具体的に論述されています。歴史教育(第3章)では、歴史学の視点として「史料批判」「時代的要因」「歴史的思考力」をあげて、津軽被害地域図と防災教育への活用が提案されています。専門研究が教育実践の広がりを支える大切な要素であると、納得できました。算数・数学教育(第4章)では、教科を架橋する視点として「自己の知識との対話」が、音楽教育(第5章)では「創造的な問い」があげられています。説得力のある論旨のおかげで、門外漢である者も実感できます。情報教育(第9章)の、「分岐」の概念に「熟慮と判断が必要」とする指摘など、知的興奮を覚える記述も少なくありません。研究の書でありながら、興味深い探究の書、一気に読み終えてしまう、魅力的な書籍です。

本書の特色は、教科を支える研究の深まりをもとに、教育実践と学習者を中心に据え、教科を架橋する接点と重なりを、丁寧かつ大胆に提案されたことにあります。1996年、兵庫教育大学を基幹校とする連合学校教育学研究科(博士後期課程)が設置され、学校教育実践学を担う多くの研究者を輩出するとともに、構成大学の研究者を中核とする教育実践学の研究でも、他に比肩するもののない、学校教育実践学の新しい研究場面を構築してきました。教科架橋型教科教育実践学を提案する本書は、博士課程を軸とする、4半世紀を超える共同研究、研究者の直接的な連携から生み出された、実証的で独創的な学術的成果といえます。研究的視点をもって教育実践にアプローチしたい大学や学校の教員、学生や院生のみなさんに、広く推薦したい一書です。

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