内容紹介
日本近世法制史学の礎を築いた故金田平一郎氏(九州帝国大学法文学部/法学部教授)の学位論文が、七十年の時を経て遂に上梓される。徳川幕府法上における民事責任の体系的研究の試みとして、当時の法制度が債権の担保に如何なる姿勢を示していたかを様々な角度から考察し、前近代日本における債権法制度、ひいては民事責任の全体像を緻密かつ明晰に描出する。
幕府法のみならず著者が通暁していた大坂法、そして九州地域との比較も視野に入れた集大成的な研究成果でありながら、未公刊かつ学界関係者の間でも長らく存在自体知られて来なかった大著に、遺族・教え子からの寄稿を加え、初期法制史学及び九州帝国大学法文学部の学問伝統を再現する。史料に対する該博な知見に基づき当時の法思考枠組に即して広く柔軟に抽出し、それらを改めて現行法制度の概念を慎重に用いて分析した、いわゆる「法科派」法制史学の真骨頂であり、また現行制度を考える上でも大きな示唆を与えうる、貴重な1冊。