弥生時代の青銅器生産体制

著者名
田尻義了
価格
定価 8,360円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0060-7
仕様
B5判 上製 392頁 C3021
発行年
2012年3月
その他
第2回 九州大学出版会・学術図書刊行助成 対象作
第7回(2013年)九州考古学会賞受賞
第4回(2014年)日本考古学協会賞大賞受賞
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内容紹介

弥生時代に日本列島で初めて青銅器の生産が行われたが,特に北部九州では青銅器生産の証拠となる弥生時代の石製鋳型が多く出土している。これまでの研究の多くは,鋳型に彫り込まれた製品に関心が向けられてきたが,本書では鋳型自体に注目し,鋳型を製作する際に残った加工痕の分析を行い,そこから当時の製作技術や加工方法の類似度の比較を行い,生産体制の復元を試みた。また,鋳型に関する研究とあわせて製品に関する研究も行い,弥生時代の北部九州では珍しい文様が鋳出された青銅器である小形仿製鏡や,形態が複雑な巴形銅器の分析を通じて,製品の生産と流通に関する考察を行った。鋳型と製品の両者の研究を進めた結果,弥生時代の青銅器生産体制の時期的な変遷が明らかとなった。鋳型集成図面36頁,青銅器鋳型と小形仿製鏡の最新集成表も収録。

目次

  はじめに
 
  図表一覧
 
第1章 青銅器生産体制研究の現状と展開
  第1節 弥生時代における青銅器生産体制研究の現状
    1. 鋳型から見た生産体制に関する研究
    2. 製品から見た生産体制に関する研究
    3. 原材料論
  第2節 東アジアにおける青銅器生産体制研究の現状
    1. 二里頭遺跡における青銅器生産について
    2. 中国東北地方・朝鮮半島における青銅器生産について
  第3節 本書によって解決すべき問題の所在
  第4節 資料と方法
  第5節 「工人」と「工房」の用語整理
 
第2章 鋳型製作から捉える弥生時代青銅器の生産体制
  第1節 加工痕より復元される鋳型の製作方法
    1. 地域設定
    2. 鋳型の出土傾向
    3. 加工痕の設定
    4. 加工パターンの認定と特徴
    5. 鋳型加工工具に関して
    6. 小結
  第2節 加工痕から見た鋳型の時期的変遷と鋳造技術の検討
    1. 加工痕の時期的変遷
    2. 加工痕の分析による鋳型の2期区分
    3. 形式ごとの加工痕の特徴
    4. 銅戈鋳型の変遷
    5. 連鋳式鋳造法と連続鋳込みについて
    6. 小結
  第3節 青銅器製作技術の空間的分析
    1. 鋳造地の認定
    2. 青銅器生産の地域性と時間的関係
    3. 遺跡群単位に見られる地域性
    4. 小結
  第4節 青銅器製作技術から見た青銅器の製作者集団の復元
    1. 特定形式製作者集団の有無について
    2. 青銅器製作者集団の地域間関係
    3. 青銅器製作者集団の遺跡間関係
    4. 小結
 
第3章 小形仿製鏡から捉える弥生時代青銅器の生産体制
  第1節 小形仿製鏡の分類
    1. 小形仿製鏡研究の現状と問題点
    2. 方法論と概念整理
    3. 小形仿製鏡の分類と編年
    4. 小結
  第2節 朝鮮半島出土小形仿製鏡の製作技術と取り扱われ方の比較
    1. 朝鮮半島出土の小形仿製鏡の製作地
    2. 朝鮮半島・日本列島両地域における小形仿製鏡の扱い方の違い
    3. 初期小形仿製鏡の製作地に関する近年の議論について
    4. 小結
  第3節 近畿産小形仿製鏡の検討
    1. 近畿・北陸地方における北部九州産の小形仿製鏡の抽出
    2. 非北部九州産の小形仿製鏡の確認
    3. 近畿産小形仿製鏡の分類と編年
    4. 近畿における小形仿製鏡の生産
    5. 小結
  第4節 小形仿製鏡の製作地と生産体制
    1. 鏡群の抽出と分布
    2. 小形仿製鏡生産体制の復元
    3. 小結
 
第4章 巴形銅器から捉える弥生時代青銅器の生産体制
  第1節 巴形銅器研究の現状と問題点
    1. 巴形銅器の分類・変遷観
    2. 巴形銅器の編年
    3. 巴形銅器の起源
    4. 巴形銅器の地域性
  第2節 九州大学筑紫地区遺跡出土巴形銅器鋳型について
    1. 資料の確認
    2. 製作された製品の復元
    3. 鋳型と製品の一致
    4. 吉野ヶ里遺跡出土巴形銅器鋳型との比較
    5. 小結
  第3節 巴形銅器の製作方法の復元
    1. 土製内型の採用
    2. 湯口の付設位置の復元
    3. 脚の彫り込み技法の細分と鋳型材質
    4. 鋳型の復元
    5. 小結
  第4節 巴形銅器の分類と変遷
  第5節 巴形銅器の生産体制
    1. 消費地側の様相
    2. 製作地と流通の様相
    3. 巴形銅器の消費の様相
    4. 小結
 
第5章 北部九州弥生時代青銅器における生産体制
  第1節 製作された青銅器の性格に関する検討
    1. 威信財システムと弥生時代青銅器
    2. 青銅器の使用のあり方と消費行為における階層的上下関係の検討
    3. 小結
  第2節 北部九州における弥生時代青銅器の生産体制
    1. 青銅器生産体制の具体像に関する検討
    2. 中期の青銅器生産体制
    3. 後期の青銅器生産体制
    4. 青銅器生産体制の変遷
    5. 小結
  第3節 青銅器製作者の社会的位置付け
    1. 製作者のいわゆる専業化について
    2. 専業化の定義とその出現について
    3. 考古学的事象との対比
    4. 小結
  第4節 青銅器生産から捉える弥生後期社会の評価
    1. 北部九州における弥生後期社会の動向
    2. 後期社会の集落動向と青銅器生産
    3. 鉄器生産の動向と青銅器生産
    4. ガラス製品生産の動向と青銅器生産
    5. いわゆる福田型銅鐸の生産について
    6. 近畿地方における青銅器生産との関係
    7. 弥生時代の社会変化と青銅器生産
    8. 小結
  第5節 東アジアにおける青銅器生産との比較
    1. 二里頭遺跡における青銅器生産との比較
    2. 中国東北地方・朝鮮半島における青銅器生産との比較
    3. 北部九州における青銅器生産の評価
 
第6章 結論
 
  参考文献
 
  図出典
 
  あとがき
 
  索引

著者紹介

田尻義了(たじり よしのり)
琉球大学法文学部卒業。九州大学大学院比較社会文化研究科修士課程修了。九州大学大学院比較社会文化学府博士課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員(PD)を経て,九州大学埋蔵文化財調査室に勤務。博士(比較社会文化)。
主要論文:
「弥生時代青銅器生産における生産体制論」『九州考古学』第76号 2001年
「弥生時代小形仿製鏡の生産体制論」『日本考古学』第18号 2004年
「弥生時代巴形銅器の生産と流通  九州大学筑紫地区出土巴形銅器鋳型と香川県森広天神遺跡出土巴形銅器の一致  」『考古学雑誌』第93巻第4号 2009年

学術図書刊行助成

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