御津の浜松一言抄『浜松中納言物語』を最終巻から読み解く

シリーズ名
九州大学人文学叢書 8
著者名
辛島正雄
価格
定価3,600円(税別)
ISBN
978-4-7985-0150-5
仕様
A5判 上製 244頁 C3395
発行年
2015年3月
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内容紹介

夢と転生に彩られた甘美な恋物語という従来の解釈から、二人の男が互いの想い人を奪い合う、「恋の闘争」の物語へ  
『無名草子』において平安後期物語の三大傑作に数えられながら、近世以前に首尾を逸亡させ、国学者たちによる研究も不発に終わった『浜松中納言物語』(原題「御津の浜松」)は、昭和初期に最終巻の伝本が二本発見されたことにより、研究史上の新時代を迎えた。以来、八十年余りを経て、その間には優れた注釈書も著され、読解のための環境は整ったように見えるのだが、実際にはどうなのか。
本書は、最終巻前半に見える主人公の心中表現を取り上げ、主語の認定について疑義を提出することから始まる。そこで明確になった誤読は、最終巻の読み解きへと波及し、従前の作品理解に大きな変更を迫ることとなる。さらには、遡って散逸首巻をも含めた作品の全体像についても、新たな読み解きを要請する。先覚の注釈書に対する数々の批判も、すべて作品の表現や文脈に即しての慎重な吟味に基づくものであり、より正確な読解を希求する姿勢が貫かれる。
古典研究において、写本に書かれていることを通行の文字に起こすこと自体は、少し心得があればさして難しいことではない。ところが、翻字した文字列をどのように判読するかで、作品の理解は一変してしまうのだ。そのような怖さとも裏腹の、古典であるがゆえに味わえる読解の愉楽へと、本書は誘ってくれる。

目次

序 言
 
第一章 「むねいたきおもひ」考
        最終巻読解のためのキーワードを見定める  

 
   一 はじめに  最終巻発見の意義
   二 問題の所在
   三 「むねいたきおもひ」は誰の思いか
   四 「むねいたきおもひ」の意味するもの
 
第二章 「むねいたきおもひ」の果て
        キーワードから最終巻を読み解く  

 
  一 はじめに  中納言の「むねいたきおもひ」
   二 「かけてもおぼし寄らざりけるはづかしさ」  式部卿宮と中納言、それぞれの思い
   三 「今までこれにさぶらひける、不便にこそ」  中納言が吉野姫君退出を急いだ理由
   四 「女君」とは誰か  通説=式部卿宮の上、を疑う
   五 「むねいたきおもひ」のゆくえ  自縄自縛となり、もがきつづける中納言
   六 「むねいたきおもひ」の果て  中納言をめぐる「よに心づくしなる例」の終局へ
   七 おわりに  「むねいたきおもひ」の始まりへ
 
第三章 交錯する「むねいたきおもひ」
        最終巻のキーワードから全編を読み解く  

 
   一 はじめに  中納言の「むねいたきおもひ」
   二 「むねいたし」を遡る  中納言から式部卿宮へ
   三 雌伏する式部卿宮  「いかでこの人をだに見てしがな」まで
   四 「わろく聞こしめしつけられぬにこそはべらめ」  中納言の慢心
   五 「うべこそはいそぎ立ちけれ」  尾け狙う式部卿宮
   六 「むねいたきおもひ」の応酬  散逸首巻と最終巻と
   七 おわりに  「聖」と「凡夫」とのはざまで
 
第四章 歌ことば「とこの浦」「にほの海」をめぐって
        首尾照応することばと「妹背」の物語  

 
   一 はじめに
   二 「うべこそはいそぎ立ちけれ」  中納言と「とこの浦」?
   三 「にほの海のあまもかづきはせぬものを」  中納言と「にほの海」?
   四 「ひとりしも明かさじと思ふとこの浦」  中納言と「とこの浦」?
   五 「別れにしわがふるさとのにほの海」  中納言と「にほの海」?
   六 首尾照応するふたつのことば  「とこの浦」と「にほの海」と
   七 おわりに
 
第五章 「おほよと」考
        巻一本文の再検討  

 
   一 問題の所在
   二 「おほよと」存疑
   三 『今とりかへばや』の「大淀ばかり」について
   四 「おほよそ」から「おほよど」へ
   五 「おほよど」説の背景
   六 『御津の浜松』も「おほよど」である
   七 おわりに  『御津の浜松』から『今とりかへばや』へ
 
第六章 「さかしげに、思惟仏道とぞあるかし」考・ほか四題
        中納言の人物像理解の一助として  

 
   一 はじめに
   二 「さかしげに、思惟仏道とぞあるかし」考
   三 「夢うつつとも知られぬ心の乱れ」は誰の「心の乱れ」か
   四 「憂きことと思ひ知る知る」の歌を詠んだのは誰か
   五 おわりにかえて  三角洋一論文の所説とそのゆくえ
 
第七章 「けぶりのさがのうれはしさ」追考
        最終巻解釈の再検討  

 
   一 「けぶりのさがのうれはしさ」存疑
   二 「けぶりのさがのうれはしさ」の意味
   三 「けぶりのさがのうれはしさ」の正解はすでに提示されていた
 
第八章 「人かた」「人こと」「ひとも」考
        最終巻本文の再検討(一)  

 
   一 問題の所在  中納言は吉野姫君になにを訴えたいのか
   二 「人かた」存疑
   三 「人こと」は「ひとこと(一言)」である
   四 「人かた」も「ひとこと(一言)」である
   五 「このひとことにこそは。」で句点にはならない
   六 「思ひうかれ?心なれども」は補足説明である
   七 「それ」が指すのは「このひとこと」である
   八 「ひともこそ」は「ひとこと(一言)こそ」である
   九 おわりに  吉野姫君の「ひとこと」への中納言の思い
 
第九章 「玉しゐのうちに心をまどはすべかりける契り」考
        最終巻本文の再検討(二)  

 
   一 問題の所在
   二 「我(が)身の玉しゐのうちに、」存疑
   三 吉野姫君と「たましひ」
   四 「心をまどはす」吉野姫君
   五 「玉しゐ」は「玉しき」の誤りか
 
補 説 最終巻校訂・解釈雑記
 
付 録 大摑み『御津の浜松』

 
 礎稿一覧
 
 あとがき
 
 索  引

著者紹介

辛島正雄(からしま まさお)
 
1955年生まれ。山口県下関市出身。九州大学大学院文学研究科博士後期課程中退。九州大学文学部助手,徳島大学教養部講師,九州大学教養部助教授などを経て,現在,九州大学大学院人文科学研究院教授。博士(文学)。
 
著書に『中世王朝物語史論』(2冊,2001年,笠間書院),『中世王朝物語全集9 小夜衣』(1997年,笠間書院),共著に『新日本古典文学大系26 堤中納言物語・とりかへばや物語』(1992年,岩波書店)ほかがある。

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