内容紹介
高齢者に病気や障害が起こり、病院・施設に入院・入所したりすることによって、トランスファーショックが起こることが知られています。トランスファーショックとは、「適応能力が低下した高齢者の環境が大きく変化すると精神的な落ち込みが起こる現象」です。そして、不活発になったり、認知症が進行したり、孤独に苛まれて悲しむことになったりします。この原因はケア・生活・人生が断裂してしまったことによるもので、悲しむべき実態といえます。これを防ぐには、同じ場所で最期まで生活する”Aging in place”を実現する必要があります。高齢者健康コミュニテイは”Aging in place”を実現するシステムです。
「高齢者健康コミュニテイ」の理念は、「高齢者の生活が継続できるようにケアを行い、自分の人生で起こったことを前向きに肯定して統合すること」を支援することです。すなわち、「高齢者が自分の人生はよいことも辛いこともあった。さまざまな方にお世話になったが自分も社会に貢献できた。生まれてきてよかったと統合すること」を支援するのです。そして、「本人の意思の尊重」、「残存機能を活用した自立支援」、「生活とケアの連続性の維持」を「高齢者健康コミュニテイ」の三大原則とします。「高齢者健康コミュニテイ」の定義は、「生活支援・健康支援・介護・医療サービスを提供する複合施設と自立型、支援型、介護型高齢者住宅及び高齢者自宅をネットワークで結び、地域包括ケアシステムの機能を満たすコミュニテイ」です。そして、高齢者が最後まで自立して生活できるように、「疾病や障害の予防の支援」や「こころのケア」に、「ホームベース型健康支援」を用います。「ホームベース型健康支援」の定義は、「自らの生活の場(Home)という安心・安定した環境のなかで、本人自身の内発的動機付けを尊重し、目標達成型で生活習慣の改善をめざしてもらい、支援者は本人ができることをできるように支援すること」です。
「高齢者健康コミュニテイ」の概念がわが国の高齢者のケアの再構築を促進し、日本のどこでも高齢者の意思が尊重され、変化していくニーズに対応して、同じ場所で継続的にケアを行っていくことができるようになることを期待したいと思います。