リヒトホーフェン日本滞在記 ドイツ人地理学者の観た幕末明治

著者名
フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェン/上村直己 訳
価格
定価 3,740円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0107-9
仕様
A5判 上製 266頁 C0021
発行年
2013年12月
その他
2014年度 日本地理学会賞(著作発信部門)受賞
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内容紹介

幕末から明治初期に日本を訪れ,滞在記や日本および日本人に関する著作を著した外国人は数多い。R. オールコックやE. サトウのような英国人外交官の諸著作が有名であるが,本書のようにドイツ人の著した滞在記は珍しい。本書は幕末の1860年と明治初年の1870年の二度にわたり訪日を果たした,プロイセン出身の近代地理学の大家フェルディナント・フォン・リヒトホーフェン(1833~1905)が日本滞在中の体験を記した日記の翻訳である。
一度目目の滞在記では江戸とその周辺の印象,幕府との条約締結交渉の過程や攘夷に揺れる不穏な情勢および長崎訪問が,二度目の滞在記では横浜に到着後に富士登山を果たし,中部山岳地帯を抜けて名古屋・大阪へ,さらにそれまで外国人がほとんど立ち寄ることのなかった長崎~天草~鹿児島~霧島~熊本~佐賀の九州周遊が描かれ,雲仙と霧島登山、鹿児島の金鉱山訪問に球磨川下りまで果たしている。幕末の動乱期および明治維新直後における日本の社会と文化・風俗,そして武士から庶民層まで様々な階層の日本人の素顔を知ることができる貴重な史料の翻訳である。
リヒトホーフェンの滞在記も他の外国人同様に,日本および日本人の美点や長所に対する感嘆に満ちた記述が随所に見られる。また,勤勉で,清潔で,器用で,学習意欲が旺盛な国民性,浅草の喧騒や品川の遊郭の繁盛ぶりなど当時の人々の日常の営み,頻発する地震・台風などの自然災害,産業化以前の山河海浜の景観など,外国人ならではの観点から「われら失いし世界」が活写される。150年前の日本人がどのように激動の時代に立ち向かい,新しい国家や社会を作り上げていったのかを知ることは,ともすればこの国の将来に懐疑的な我々に多いに示唆を与えてくれるであろう。

目次

 序文 リヒトホーフェンをめぐる学縁  西川 治(東京大学名誉教授)
 
 訳者まえがき
 
序 フェルディナンド・フォン・リヒトホーフェンの日本滞在 彼の日記より  ヴァルター・シュタールベルク
 
第一部 使節団旅行日記 一八六〇/六一
 
第二部 第二回日本滞在記 一八七〇/七一
 
 訳者あとがき
 
 索引(人名/地名/事項)

著者紹介

上村直己(かみむら なおき)
昭和14年(1939)鹿児島県生まれ。
九州大学大学院文学研究科(ドイツ文学)博士課程中退。
富山大学助教授を経て熊本大学文学部教授。現在,同大学名誉教授,
熊本学園大学非常勤講師,日本独学史学会会長,九州大学博士(文学)。
ドイツ学史・日独文化交流史,比較文化論専攻。
著書に『明治期ドイツ語学者の研究』(多賀出版),『九州の日独文化
交流人物誌』(熊本大学文学部地域科学科),『西條八十とその周辺』
(近代文芸社),『近代日本のドイツ語学者』(鳥影社),『西條八十の
見たベルリン五輪』(熊本出版文化会館)など。

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