清代北京の首都社会 食糧・火災・治安

著者名
堀地 明
価格
定価 8,580円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0354-7
仕様
A5判 上製 412頁 C3022
発行年
2023年8月
その他
第14回 九州大学出版会・学術図書刊行助成 対象作
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内容紹介

本書は首都とは何か、清代北京の三つの空間構造より論を起こし、北京首都社会論を提起する。本論では第一に首都北京における水害救済と食糧流通、第二に火災と消防組織、第三に治安統治と戒厳体制の三領域を考察し、北京首都社会における特質を解明する。三領域を考察する際に、首都北京を統治する清朝政府の諸政策も論じられる。本書は問題を可能な限り具体的に考察し、事象の実態を捉え、それがどのように変化するのかという研究方法を重視している。本書では、北京と台北に架蔵されている非編纂の行政文書である檔案史料を分析し、事象への具体的考察を試みる。考察の年代は18世紀の乾隆年間から1900年の義和団事件までである。

第一部では、水害救済と食糧問題を考察する。水害の個別事例研究をより、社会的諸階層の動向を観察する。また、北京城内で流通していた食糧が南方から輸送され商品化された漕糧であることを明らかにする。第二部では、官設・民間と紫禁城における火災と消防組織について論じる。清代北京の火災消火活動の事例を年表に基づいて、どのような組織がどのようにして火災を消火していたのかを考察する。義和団事件以後に設立された北京の消防隊には、日本人が関与していたことにも論及する。第三部では、治安統治と戒厳体制の問題を考察する。首都の行政区画と範囲を明らかにし、治安末端組織と治安監視施設の実態を詳らかにする。19世紀以降に首都北京が国内敵対勢力と外国の脅威に直面し、戒厳体制が構築された際、清朝はどのように首都の住民を掌握し組織化を行い、危機に対応したのか、すなわち国家による社会統合、及び民間社会が日常的な連係体制を形成してゆく諸相を明らかにする。

目次

序 章
 
 一 都市と首都
 二 清代北京の三空間構造と都市行政・人口
 三 本書の課題と構成、主要使用史料  檔案史料  
 
   第一部 水害救済と食糧流通
 
第一章 嘉慶六年の水害と嘉慶帝の救荒政策
 
 小序
 一 『欽定辛酉工賑紀事』について
 二 水害の発生と被害の諸相(嘉慶6年6月)
 三 蠲免と京城急賑(嘉慶6年6~8月)
 四 以工代賑(嘉慶6年7~11月)
  (一) 永定河治水工程
  (二) 京城内外河道と通恵河の浚渫
 五 大賑(嘉慶6年10月~7年4月)
  (一) 棉衣散給
  (二) 大賑
 小結  『欽定辛酉工賑紀事』の編纂  
 
第二章 乾隆―道光年間における食糧流通
 
 小序
 一 京師の食糧供給と米市
  (一) 京師に流入する穀物と俸甲米の商品化
  (二) 京城米糧市と商人
 二 囤積
  (一) 囤積数量制限
  (二) 囤積と米糧流通
 三 米穀出城制限
  (一) 米穀出城禁止の規定
  (二) 米穀出城と京師周辺の米穀需要
 小結
 
第三章 嘉慶・道光年間における回漕問題
 
 小序
 一 回漕
  (一) 回漕と漕糧
  (二) 嘉慶19年王三案と回漕向け米糧の形状
 二 回漕の地点と手法
 三 回漕の要因と対策
  (一) 回漕の要因
  (二) 回漕対策
 小結
 
   第二部 火災と消防組織
 
第四章 官治消防組織と火災消火活動年表
 
 小序
 一 火災発生状況と消火者
 二 乾隆―道光年間の内外城火災と官治消防
 三 消防隊の創設と消火活動
  (一) 消防隊の創設と日本人教習
  (二) 消防隊の拡充と消火活動
 四 巡警の消火活動
 小結
 
第五章 民間消防組織
 
 小序  今堀誠二『北平市民の自治構成』によせて  
 一 水会の成立と治安維持
 二 水会と国家
 三 水会の火災消火活動とその問題点
  (一) 水会の火災消火活動
  (二) 水会の消火活動の問題点
 小結
 
第六章 紫禁城の消防組織
 
 小序
 一 紫禁城内の火災と紫禁城内火班の成立
 二 嘉慶年間の門禁強化と紫禁城内火班
  (一) 門禁強化と嘉慶19年火班章程
  (二) 嘉慶24年火班章程と消防器具の増設
 三 光緒14年貞度門火災と火班改革
 小結
 
   第三部 治安統治と戒厳体制
 
第七章 乾隆―道光年間の治安と保甲
 
 小序
 一 京師の行政区と治安行政
  (一) 行政区画と治安行政
  (二) 司坊官と窃盗案件処理
 二 柵欄と堆撥
 三 保甲
  (一) 京師の社会気風と保甲
  (二) 嘉慶18年天理教徒紫禁城襲撃事件と保甲編査
 四 保甲の弛緩と流動階層
 小結
 
第八章 咸豊―光緒年間の戒厳体制と巡防・団防・練勇
 
 小序
 一 太平天国の北伐と京師戒厳体制
  (一) 巡防設置と内城の十家総牌
  (二) 外城の団防と守望相助
 二 第二次アヘン戦争期における守望相助と団防
  (一) 英仏連合軍の天津進攻と咸豊8年の京師団防
  (二) 咸豊10年英仏連合軍の北京進攻と京師団防
 三 同治・光緒年間の団防と小鑼会
  (一) 回民反乱と団防の表彰
  (二) 光緒年間の守助会と小鑼会
 四 外城における練勇の設置と日清戦争
  (一) 外城における練勇の設置
  (二) 日清戦争期の団防と練勇
 小結
 
終 章
 
 あとがき
 引用文献一覧
 索引

著者紹介

堀地 明(ほりち あきら)
 
大阪市立大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員、
中国人民大学清史研究所高級進修生、中央研究院近代史研究所訪問学者を経て、
現在、北九州市立大学外国語学部教授。博士(文学、大阪市立大学)。
 
主著
『明清食糧騒擾研究』(汲古書院、2011年)
『明治日本と中国米』(中国書店、2013年)
共著
『民衆反乱と中華世界』(汲古書院、2012年)
『米騒動・大戦後デモクラシー百周年論集II』(集広舍、2019年)

学術図書刊行助成

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