内容紹介
人新世とは何か。
今や、自然科学だけではなく社会・人文科学の分野から人新世に関する議論が活発になっている。本書は、「人新世という時代に私たちはいかに生活し、地球システムをいかに維持していくべきか。また、地球を改変する力、営力となったツーリズムは人新世時代にどう向き合うべきか」を問うたものである。
第1部「人新世という時代」では、人新世議論の発端となった2000年、2002年のクルッツェンらの報告を紹介し、産業革命以後の人新世時代を3つのステージに分けて、その歴史的変遷を概観する。そして、クルッツェンがインタビューに応じて、クルッツェン自身が語った人新世の本質について、解説を加えながら明らかにしている。
第2部「人新世時代のツーリズム」では、1970年代からツーリズムが環境へ負の影響を与えてきたことを概観する。次いで、ツーリズムは気候の恩恵を受けて発展してきたが、一方でツーリズムが気候変動と地球温暖化に影響を与えてきたことを明らかにする。さらに、人新世時代において営力となったツーリズムのあり方を考察し、これまでのツーリズムから脱却して、人新世第3ステージにふさわしい3つのツーリズム、地球をケアする地球愛をもったツーリズムのありかたを示す。
第3部「人新世と持続可能なツーリズム」では、ツーリズムが人新世時代にどのように変遷してきたか、その具体的事例をヨーロッパアルプスに求め、ツーリズムの現状を明らかにする。次いで、1970年代からのマスツーリズムの発展に対して、もう一つのツーリズムとして環境に負荷を与えることの少ないソフトツーリズムが生まれた背景とその今日的意義を考察する。そして、人新世時代に求められている持続可能なツーリズムの可能性を明らかにする。