内容紹介
本書はヨーロッパ古文書学の父,フランス実証主義史学の確立者として知られるジャン・マビヨン(1707年没)の主著に関する世界で最初の現代語訳である。著者は17世紀の戦乱による史料の散逸と誤った準則の横行を前にして,「文書は古ければ古いほど疑わしい」とする通説と闘うため,そして「歴史は正しく保存されない限り死滅する」との固い信念から,デカルトの新しい合理的方法論に基づいて,真偽判別の要素を文書の材質,書体,文体,下署,印章,日付事項に分類し,総合的視点から新しい準則を導き出すことに成功,ここに近代古文書学の学問体系が確立されたのである。と同時に,本書はヨーロッパで最高の歴史家たちの協力,26年間にわたって繰り返された広範な史料探査,古事・法律・古典文学の該博な知識によって完成されたもので,古文書学という旧来の狭い枠組みを越えた,フランス実証主義史学の真髄をここに見ることが出来る。