内容紹介
レウヴェン大学E.アールツ教授による連続講演会の邦訳集。中世初期から後期にかけてヨーロッパのビールとワインの嗜好変化をたどり,ホップビールの流行とワイン消費の減退,セルヴォワーズ(エール)の遍在を検証することで,飲料の価格動向の重要性を示す。次に,資本主義揺籃の地ブリュッヘとアントウェルペンに焦点を当て,ヨーロッパ金融市場の変遷を説く。前者はイタリアの為替技術を伝承しそれを西欧全域に伝播する役割を果たしたが,そこから重心移動した後者の金融市場では手形の裏書など新技術を切り開いたことを強調する。さらに,神聖ローマ皇帝カール5世期に最盛期を迎えたネーデルラント社会経済の光と陰を描写する。国際市場アントウェルペンを核として,あらゆる経済的側面で成長を見せるものの,そこには見逃すことのできない経済社会的格差が生じていた。