内容紹介
「フラメンカ物語」は13世紀フランス中南部地方の方言であるオック語で書かれた作者不詳の韻文風俗物語であり,現存する中世オック語作品群のうちでも資料的価値・文学的価値ともに「文句なしの一級品」である。フランス南部カルカソンヌの市立図書館に残る唯一の写本をもとに訳出された八千余行にわたる詩句の厳密な考証と分析に基づいた訳文は,一般の読者にも親しみやすい現代語訳となっており,きわめて明解である。
美しきフラメンカを娶ったブルボンの領主アルシャンボーは,その結婚披露宴での些細な出来事から嫉妬に駆られ,彼女を他の男の目にふれさせまいと塔に閉じ込める。それまで恋愛の試練にさらされたことのない異国の若い騎士ギヨーム・ド・ヌヴェールは,その話を聞き彼女を愛そうと心に決め,《愛の神》の導きによりブルボンへ赴く。助修士に扮したギヨームとフラメンカの教会でのやりとり,地下道を通っての密会を通じ,ふたりは愛を深めてゆく。多彩な登場人物たちの心の動きの描写を通じて展開される華麗な物語。