本書は日本文学が外来と土着,歴史と神話の二極のあいだをゆらぎながら自己構造化を進める過程と規定し,その永遠の主題が原初から失われている神話の再構築にあると主張するものである。すなわち,「古事記」から川端文学まで同じ主題を追求するものであり,ゆらぐことで自らのアイデンティティを保ってきた文学だというのである。そのような文学の理解には失われた記憶の再構築としての精神分析理論が有効であり,それを活用して古歌や俳句,あるいは近代小説の分析を行う。日本文学の根源的問題を追求し,その人類的意義を定めようとした画期的かつ壮大な試みだと言ってよい。
第一部 日本文学の本質 第二部 日本文学の運命第一章 日本文学と「ゆらぎ」 第一章 『古事記』の歌第二章 日本文学の出発と展開 第二章 『万葉集』の歌第三章 日本文学史の問題点 第三章 『古今和歌集』の歌第四章 構造主義と日本文学 第四章 『新古今和歌集』の歌第五章 日本文学と精神分析 第五章 モデルニスモと川端康成 第六章 美しい日本の私
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