内容紹介
本書はHealth Communication, Strategies for Health Professionals, 第3版の全訳である。米国やわが国では,本書の初版および第2版の出版以来,医療は大きく変化してきた。初版が出版された1980年代の中頃,米国での医療に関する議論の多くは診断群別包括支払制度(DRG)や医療費抑制の方法に関するものだった。1990年代初頭以降は,DRGは当然のものとして受け入れられ,議論の中心は伸び続ける医療費の抑制策へと移っていった。米国政府によって新たにまとめられた医療改革の方策が失敗に終わった後は,議論の中心はマネジド・ケアの役割やそのメリット・デメリットに移っている。わが国でも,米国と同様,DPCの導入や,医療費の抑制に関する様々な取り組みが行われている。
以上のように,米国やわが国で,医療は劇的に変化したが,効果的なコミュニケーションこそが医療のあらゆる局面で最も大切だという事実は変わっていない。むしろ,医療コミュニケーションの重要性は増しているようにすら見受けられる。
本書は医療現場で生起するコミュニケーションについて解説し,医療従事者が,患者,家族あるいは他の医療従事者とのコミュニケーションを改善するうえで役立つ,理論に基づいた技法を伝授することを目的に書かれている。第3版では,新たに,第9章「異文化間コミュニケーションと医療」が追加され,異文化コミュニケーションに関する諸問題が論じられている。また,従来からある1~8章についても,最新の研究知見を大幅に取り込み,内容が補強されている。本書は医療系大学における医療コミュニケーション学の教科書や,患者や同僚とのコミュニケーション問題に関心のある医師,看護職,その他の医療者一般にとっての有益な実用書・研修用教材になると思われる。