内容紹介
沖縄には長寿者が多く,平均寿命も日本で最も長い。一般に世界の長寿地は気候の寒い地方であるが,沖縄は亜熱帯に属する。沖縄は食生活など生活様式が本土とはやや異なる趣を持つ土地であるが,生活様式の違いが長寿に連なるのか検証する必要がある。
平成8年度から厚生省長寿科学総合研究事業をうけて沖縄の長寿の要因について研究が開始された。この本は沖縄の長寿を生活,風土,食生活,疾病の面からそれぞれの専門家が独自に研究を進めた3年間の研究成果をまとめたものである。
2020年までには,わが国の人口の約24%が65歳以上の高齢者によって占められると予想されている。寝たきりや呆けた人の少ない健康な高齢社会を願わずにはおられない。いまや地域社会は介護保険制度の導入で揺れ動いているが,介護を受ける必要のない人生を送ることも可能である。やがて到達するであろう死の瞬間まで人々が年齢相応の健康を維持できればこれに優るものはない。このような観点から強力な社会施策が推進されることも必要である。この本が社会病理を考える資料として役立つことができれば幸いである。(本書「はじめに」より)