内容紹介
本書は,著者がこれまでに研究した「神経症の心理機制」の大集成である。神経症(不安障害と身体表現性障害)の中核症状とされる「不安」とは何かを多くの文献をもとに明らかにし,脳生理と認知心理学の研究を結びつけ,不安と葛藤を説明する「こころ」のモデル(精神機構モデル)を提唱した。このモデルから初診時に,既に神経症の病的心理が手にとるように見え,また神経症の亜型は,挫折した現実欲求の分布が異なることも明らかにされた。分析学派の心因とは異なる現実的な心の葛藤(心因)であり,この葛藤は現実欲求の充足で消え,また同時に症状も消えることがわかった。本書はまた,新しい精神療法を模索する上でも有益な著書である。