日本におけるトキソプラズマ症

著者名
矢野明彦 編著
価格
定価 4,950円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-87378-941-5
仕様
B5判 上製 150頁 C3047
発行年
2007年7月
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内容紹介

ペット(ネコ)のコンパニオンアニマル化,AIDS合併症,医原病(臓器移植,輸血,院内感染)などで注目されるトキソプラズマ症は,理解しにくく診断・治療方針に悩まされることが多い日和見感染症である。本書は,トキソプラズマ症研究の第一人者矢野明彦が,基礎研究と臨床現場の融合を目指し,特に臨床医向けに遺した総括的好編著であり,先天性および後天性トキソプラズマ症の豊富な症例を挙げ,病態に即した診断法・治療法・予防法を指南している。

目次

まえがき
第1章 トキソプラズマ症理解のための基礎編
  I.   一般的考察
  II.  分類学・形態学
  III.  疫  学
  IV.  生活史と感染経路,体内移行経路と予防
    (1) 古典的生活史
    (2) 免疫不全患者・免疫不全動物における新規生活史
  V.   診断方法
    (1) トキソプラズマ特異的抗体測定による補助診断法
    (2) トキソプラズマの分離・同定による確定診断法
      A. トキソプラズマの形態学的同定
      B. トキソプラズマ特異的遺伝子の同定
      C. トキソプラズマ特異的蛋白の同定
    (3) 画像診断を含めた各領域の臨床診断
    (4) 自己抗体測定による(補助)診断法
  VI.  病原性
    (1) 中間宿主・終宿主におけるトキソプラズマのステージ
    (2) トキソプラズマの病原性と病因,病態生理
  VII.  トキソプラズマ同定の臨床的意義について
  VIII. 生理・生化学と化学療法
    (1) トキソプラズマのヌクレオチド生合成
      A. プリン生合成経路
      B. ピリミジン生合成経路
    (2) トキソプラズマのエネルギー代謝
      A. 糖質代謝
      B. 脂質代謝
    (3) 葉酸代謝
      A. 葉酸代謝阻害剤
      B. 蛋白合成阻害剤
      C. その他
第2章  臨床編:先天性トキソプラズマ症
  はじめに
  I.   トキソプラズマの胎児への感染ルート
  II.  胎盤の防御機序について
  III.  先天性トキソプラズマ症の成立機序
  IV.  先天性トキソプラズマ症の病理
  V.   新たな先天性トキソプラズマ症の病型分類
      ――非感染性先天性トキソプラズマ症の提案――  
  VI.  先天性トキソプラズマ症の病型分類
  VII.  先天性トキソプラズマ症の検査項目と診断法
    (1) トキソプラズマ同定による確定診断
      A. 形態学的同定法
      B. トキソプラズマ特異的抗原(遺伝子)同定法
    (2) トキソプラズマ特異的抗体の検出による補助診断(血清診断)
    (3) 臨床診断・画像診断
    (4) 鑑別診断
  VIII. 妊婦検診の有効性と必要性
  IX.  先天性トキソプラズマ症の治療
    (1) 妊婦化学療法
    (2) 新生児化学療法
  X.   予防法
  XI.  症  例
    (1) 典型的臨床症状(水頭症,脳内石灰化,網脈絡膜炎,小眼球症)
       を呈し脊髄液よりトキソプラズマが分離・同定され,確定診断で
       きた先天性トキソプラズマ症の症例
    (2) 妊娠8週の抗体検査は陰性であったが,妊娠27週より胎児水頭症
       を指摘され,胎盤と新生児の血液・髄液からPCR法にてトキソプ
       ラズマDNAが検出され確定診断に至った先天性トキソプラズマ症
       の症例
    (3) 仮死で出産し,髄液のPCR法により先天性トキソプラズマ症と確
       定診断した症例
    (4) 定量的競合的PCR法により髄液中の治療評価ができた先天性トキ
       ソプラズマ症の症例
    (5) 胎盤より確定診断し得た先天性トキソプラズマ症の症例
    (6) 先天性トキソプラズマ性網脈絡膜炎の症例
    (7) 痙攣発作を繰り返し,母乳からトキソプラズマ特異的遺伝子が同
       定された症例
    (8) 尿崩症を伴い先天性トキソプラズマ症と確定診断されたダウン症
       候群の症例
    (9) 非感染性先天性トキソプラズマ症の症例
第3章 臨床編:後天性トキソプラズマ症
  はじめに
  I.   臨床症状と徴候
    (1) 免疫能のある宿主への初感染
    (2) 免疫不全患者における感染
        ――免疫不全患者への初感染および
                   感染患者の免疫能低下による再燃――  
    (3) 網脈絡膜炎
    (4) 難治性およびその他のトキソプラズマ症
  II.  病型と検査項目
    (1) 免疫能のある人への急性感染
    (2) 免疫不全患者の再燃性感染
    (3) トキソプラズマ性網脈絡膜炎
    (4) その他の検査所見
  III.  鑑別診断
  IV.  治療法
    (1) 抗トキソプラズマ薬
    (2) 後天性トキソプラズマ症に対する化学療法
      A. 免疫能正常者におけるトキソプラズマ症
      B. 免疫不全患者におけるトキソプラズマ症
      C. 難治性トキソプラズマ症
  V.   予防およびペットを含む動物のトキソプラズマ感染
  VI.  症  例
    (1) 網脈絡膜炎
      A. 硝子体液からトキソプラズマDNAを定量的競合的PCR(QC-PCR)法
         で同定した症例
      B. 動脈周囲炎,網膜静脈分枝閉塞症,視神経炎を伴った後天性眼
         トキソプラズマ症
    (2) リンパ節炎
      A. 秋田市およびその近郊におけるトキソプラズマ症7例の報告
         ――5例の外注検査での抗トキソプラズマ抗体陰性例,
           定量的競合的PCR(QC-PCR)法で確定診断した症例を含む―― 
      B. 急激なリンパ節腫脹を呈し,病理像と血清抗体価より本症を疑い,
         QC-PCR法により確定診断に至った後天性トキソプラズマ症の1例
    (3) 髄膜脳炎
      麻疹ウイルス持続感染とトキソプラズマ感染を伴った脳炎の1例
    (4) 肺  炎
      肝移植後にトキソプラズマ性肺炎を起こした症例
    (5) 心筋炎・心膜炎
      心膜液 PCR 法によって診断された基礎疾患のないトキソプラズマ心
       膜炎の1例
    (6) 皮膚科療域症例
      抗トキソプラズマ抗体高値を示した皮膚筋炎の1例
    (7) 耳鼻科領域症例
      診断困難な頸部腫瘤で病理所見よりトキソプラズマ症が疑われ,抗
       トキソプラズマ抗体価が高くトキソプラズマ症による頸部リンパ節
       腫脹と診断された症例
    (8) 精神・神経科領域症例
      A. 失語,異常行動などを呈したAIDSに伴うトキソプラズマ脳炎と
         思われる1例
      B. 急性横断性ミエロパチーを伴ったトキソプラズマ症の1例
    (9) HIV感染に関連した症例
      トキソプラズマ性脳炎を発症したAIDS患者4症例
第4章 トキソプラズマ症の将来に向けた基礎研究
  I.   日和見感染性寄生虫病と防御反応修飾因子
  II.  生体防御反応とその統御遺伝子・分子
  III.  トキソプラズマ感染細胞による抗原提示機構
    (1) 原虫感染における抗原提示
    (2) トキソプラズマのエスケープ機構と感染宿主細胞の防御反応
    (3) トキソプラズマ感染細胞による抗原提示機構
    (4) トキソプラズマ感染宿主細胞の病因論的意義
    (5) Th1,Th2 T 細胞分化における抗原提示細胞の役割
  IV.  トキソプラズマ感染症の制御機構
    (1) トキソプラズマ感染防御統御遺伝子群の解析
    (2) 抗トキソプラズマ エフェクター機序
      A. 古典的防御機構
      B. 新たなトキソプラズマ―宿主相互関係解明への展開
         ――エフェクターB-1細胞と抑制性B-2細胞の発見――  
  V.   トキソプラズマ毒性分子T.g.HSP70のTLRを介した病態像
  VI.  T.g.HSP70によるトレランス誘導
  VII.  樹状細胞活性化とワクチン開発
      ――レコンビナントワクチンと遺伝子ワクチン――  
  VIII. トキソプラズマ感染による自己免疫誘導機序
      ――トキソプラズマ感染による自己免疫疾患発症予防――  
  IX.  臨床応用への展望
  X.   おわりに
あとがき
索  引

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