地方交付税制度の運用と展開 戦後史の再構築を目指して

著者名
大塚 勲
価格
定価 5,940円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0137-6
仕様
A5判 上製 336頁 C3033
発行年
2014年9月
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内容紹介

日本と諸外国の地方制度の違いは地方交付税制度が存在するシステムと存在しないシステムの違いと言っても過言ではない。しかも,この制度は国の財政とも密接に連携してきた。本書は戦後半世紀あまりを対象に,基準財政需要額の算定を明らかにすることで,法体系に基づく地方制度の構造とその構造変化を解明している。さらに政府部門の大転換点であった70年代の構造変化を地方制度の視点から詳述した。この意味で本書は財政構造を解明する書であり,歴史の真実を明らかにする書でもある。

目次

はじめに

 

第1章 研究の目的と前提となる事項の整理

 

 1.研究の目的と対象
  1.1 地方交付税制度に関わる先行研究
  1.2 研究の目的
  1.3 ルールに基づく運用と裁量的運用の概念
  1.4 本研究の検討対象
  1.5 本研究の構成
 2.地方交付税制度成立以前の地方財政調整制度の変遷
  2.1 財政調整機能を具備した地方分与税制度と地方配付税制度
  2.2 財源保障機能を整備した地方財政平衡交付金制度
 3.地方制度の法体系における財源保障の位置付け
  3.1 地方制度の法体系の概要
  3.2 地方自治法における地方団体の事務
  3.3 財源保障に関わる規定
  3.4 法定事務の執行に関わる規定
 4.地方交付税制度における財源保障機能の仕組み
  4.1 ルールに基づく運用の重要性
  4.2 財源保障機能と財政調整機能の概念
  4.3 財源保障を実現するための仕組み
  4.4 地方交付税の配分方法

 

第2章 基準財政需要額算定の時代区分と裁量的運用

 

 1.本章の目的とその前提
  1.1 地方財政平衡交付金制度における裁量制
  1.2 地方交付税制度の裁量可能性
  1.3 先行研究の整理
  1.4 本章の目的
 2.需要額算定における検討対象の抽出
  2.1 地方交付税法における普通交付税の算定方法
  2.2 検討対象としての需要額算定の裁量制
 3.需要額と収入額の計量分析
  3.1 需要額と収入額の時系列分析
  3.2 景気循環を考慮した時系列分析
  3.3 財政状況を考慮した時系列分析
  3.4 2つの裁量的運用
 4.裁量的運用に基づく時代区分と裁量的運用
  4.1 需要額と収入額の連動性の経年変化と地方財政対策の推移
  4.2 裁量的運用を基準とした需要額算定の時代区分
  4.3 自治省関係者の需要額算定に関する説明
  4.4 74年以前の裁量的運用の実相
 5.裁量的運用の導入の背景
  5.1 地方団体に対する政府の思想
  5.2 地方財政平衡交付金制度における脆弱な財源保障機能の形成
  5.3 財源保障機能の構造的欠陥
 6.裁量的運用の導入の理由
  6.1 地方財政平衡交付金制度における総額を巡る争い
  6.2 発言力低下が著しい旧内務官僚
  6.3 第6条の3第2項とその意味
  6.4 導入初期における6条の3第2項の適用可能性
  6.5 対立を生む構造と裁量的運用の導入
 7.裁量的運用に対する特例措置の効果
  7.1 74年度以前の交付税率の変更
  7.2 67年度以前の地方財政対策
  7.3 68年度以降の地方財政対策
  7.4 特例措置の役割
 8.需要額算定における裁量的運用の時代
  8.1 需要額算定の時代区分
  8.2 74年度以前の裁量的運用

 

第3章 基準財政需要額算定における裁量からルールへの転換

 

 1.本章の目的
 2.保革の対立と財政への影響
  2.1 伯仲国会と政府の対応
  2.2 一般会計における国債の大量発行と財政移転の拡大
 3.革新自治体が生み出す財政メカニズムと超過負担問題
  3.1 超過負担の概念とその問題
  3.2 革新自治体の法定事務への影響
  3.3 財政移転の推移
  3.4 地方財政制度に基づく超過負担の構造
 4.伯仲国会と超過負担問題への政府の対応の変化
  4.1 革新自治体の拡大と伯仲国会の成立
  4.2 超過負担問題に対する政府の対応の変化
  4.3 国庫支出金の運用変化の計量分析
  4.4 国庫支出金の膨張と地方財政収支試算
  4.5 超過負担の是正に対する評価
 5.地方制度におけるルール化の進展
  5.1 自治省の機構改革
  5.2 地方財政法に基づく法制整備
  5.3 超過負担の是正
  5.4 特別交付税におけるルール化の進展
  5.5 ルール化の意味するところ:戦後第2の地方制度改革
 6.需要額算定のルールに基づく運用への転換
  6.1 需要額の算定方法
  6.2 裁量的運用の基本構造
  6.3 裁量的運用の崩壊とルール化の進展
  6.4 慢性化する地方財政対策

 

第4章 ルールに基づく基準財政需要額の拡大

 

 1.本章の目的
 2.検討の前提
  2.1 需要額の算定対象と算定方法
  2.2 用語の整理とその算出方法
 3.需要額の主な増加要因の抽出
  3.1 経費別需要額の増加要因
  3.2 経常経費の増加要因
  3.3 80-2000年度における需要額の増加要因
 4.運用ルールに基づく給与費等需要額の増加
  4.1 給与費等需要額の推移
  4.2 給与単価の変動
  4.3 職員数の変化
  4.4 ルールによる需要額の増加
 5.運用ルールに基づく厚生労働費(除給与費等)の増加
  5.1 厚生労働費(除給与費等)における主要な制度の新設と変更
  5.2 国庫支出金が規定する運用ルール
  5.3 ルールによる需要額の増加
 6.運用ルールに基づく投資的経費の増加
  6.1 投資的経費の算定
  6.2 地方債制度が規定する運用ルールとその検証
  6.3 ルールによる需要額の増加
  6.4 投資的経費における運用ルールとその考察
 7.ルールに基づく運用の需要額拡大への影響
  7.1 80年度以降のルールに基づく運用とその効果
  7.2 ルールに基づく運用と需要額と収入額の連動性の変化

 

第5章 地方支配の構造と地方交付税制度の役割

 

 1.本章の目的とその前提
  1.1 地方制度の法体系
  1.2 本章の目的
  1.3 検討の方法
 2.歳出総額に対する需要額の影響
  2.1 規模の経済性の批判的再検討の試み
  2.2 規模の経済性に関わる先行
研究
  2.3 需要額が生み出す規模の経済性
  2.4 平均費用関数の算出と検定
  2.5 平均費用における規模の経済性の考察
  2.6 歳出総額に対する需要額の影響
 3.費目別歳出に対する需要額の影響
  3.1 需要額の一般財源性に対する批判的検討
  3.2 推定式の再検討とその特定
  3.3 各種歳出の計量分析
  3.4 歳出内訳に対する需要額の影響
 4.複数の法律による重層的な地方支配と地方交付税制度の役割
  4.1 複数の法律による重層的な地方支配の構造
  4.2 需要額算定の妥当性の確保とその膨張を抑制する役割
  4.3 地方を法定事務経費の負担機関とする役割

 

終 章 戦後史の再構築に向けたプロローグ

 

 1.戦後の地方制度史のアウトライン
 2.地方交付税研究の今後の課題

 

参考文献

 

索  引

著者紹介

大塚 勲(おおつか いさお) 
1990年,早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。
富士総合研究所,住信基礎研究所を経て,
三菱UFJリサーチ&コンサルティング客員研究員。
熊本大学大学院非常勤講師。専門は財政学。

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