内容紹介
スイスにおいて連邦主義の新たな活性化策(「連邦政府とカントンの間の役割分担と財政調整の再構築」)が2008年から実施されている。その四支柱は、連邦政府とカントン(州政府)の間での役割分担の再構築、連邦政府とカントンの間の垂直的連携、州政府間の水平的連携、垂直的・水平的財政調整である。本著では、制度の紹介と初期成果の分析に焦点を置いている。
改革に当たっての基本的な方針は、カントンの主体性の確保、補完性の原則、財政一致の原則(意思決定者・受益者・費用負担者を一致させること)、中立性の原則(四支柱の変革に伴う負担増減を連邦政府とカントン全体のそれぞれのレベルで中立化を図ること)等である。これら諸原則がどのように制度に組み込まれたか、さらに初期成果の分析も加えて考察している。
スイスでは「世紀の国家的プロジェクト」とみなされている改革に着手された背景には、カントンの権限が重視される制度上の枠組みにありながら、実態としては従来、連邦政府の権限が徐々に強化されてきた経緯がある。こうした中で、スイスの新たな活性化策が具体的にどう展開されようとしているのか、各種公的文書を第一資料として分析している。