Human Behaviors and Analytical Methods in Economic, Environmental and IT-related Contexts

シリーズ名
Series of Monographs of Contemporary Social Systems Solutions: volume 17
著者名
田神慶士・塗師本彩・新宅公志 編
価格
定価 5,500円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0396-7
仕様
B5判 並製 118頁 C3033
発行年
2026年2月
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内容紹介

情報科学等の現代的諸科学を大幅に取り入れ、コンピュータ等を用いて実際の社会・環境・経営等を含む経済現象を分析することを試みる学問として「経済科学」を定義し、その立場から社会システムの諸問題の解決に取り組む研究成果シリーズの第17集。

第1章:企業によるグリーンウォッシュ行為とそれに対する情報開示政策の効果に関する理論分析を行う。本章では、たとえ情報開示政策によってグリーンウォッシュが抑制されたとしても、それが必ずしも社会的に望ましい結果をもたらすとは限らないことを示す。すなわち情報の透明性を高めることが、かえって環境投資の抑制や社会厚生の低下を引き起こす可能性がある。この結果は情報開示制度の設計に対して重要な含意を持つ。

第2章:1961年から2019年の世界137か国を対象としたパネルデータを用いて、気温変化が農業労働生産性に与える影響を検証する。本章の検証では、低所得国においては、基準気候値に対して気温が1℃上昇すると、農業労働生産性が13.3%低下することが示される。さらに、地球温暖化の加速が顕著である2000~2019年のサブサンプルでは、世界全体のサンプルにおいて有意な負の効果が観察され、従来は脆弱性が低いと考えられてきた高所得国においても影響が確認された。これらの結果は、途上国における標的を絞った適応政策の必要性を強調するとともに、高所得国であっても近年の温暖化によるリスクに直面し得ることを示しており、気候変動に強靱な農業戦略に向けた国際的協力の重要性を示唆している。

第3章:気象データを用いた自然景観の発生予測に取り組む。東京都檜原村の払沢の滝は、日本の滝百選にも選ばれている滝であり、冬季には滝の凍結現象である「氷瀑」が見られることから有名になり、観光名所になっている。本章では、この氷瀑について、気象予報の基になる全球数値予報モデルGPV(Grid Point Value)を用いて、何日以前から氷瀑の発生の予測が可能か調査を行った。観光客にとっては事前に氷瀑の発生が分かれば旅行計画を立てるうえでも有益であり、観光業者にとってもメリットがあると考えられる。加えて、氷瀑の発生予測は潜在的な観光客数の増加にも結び付くと思われる。

第4章:広島修道大学経済科学部3年生向け授業「ゼミナールI」において実施された、学生が主導する4つのオークションの結果をまとめたものである。この取り組みの主な目的は、学生がこれらの制約を可能な限り包括的に予測し、必要に応じてルールを変更し、オークションをうまく実行できるようにすることである。結果としてこの取り組みにおける教育目標は概ね達成されたが、学生が潜在的な問題に対してより広範な想定を行うために、より広範な指導を提供することが重要であることが明らかになった。

第5章:電子機器利用者の手や指、顔の動きを低コストで計測する手段や分析法に関する研究論文である。本章では、人間の外見的情報だけでなく、内面的情報として生体情報も計測できるようにシステムを拡張する方法を紹介する。具体的には、MediaPipeを使ってWebカメラから人間の外面的情報として手指や顔の動作と全身の姿勢を取得し、脳波センシングヘッドバンド MUSE2から内面的情報として生体情報(脳波)を取得する。これらのデータ取得は、プログラミング言語Python の機能の一つである multiprocessing Process を使用して並列処理される。実験では、コンピュータのキーボード入力時における手指の動作と脳波を同時に計測し、その関係性を可視化した実験結果を示す。我々の提案法は、PC利用者、作業者、学習者などの行動の評価・認識に貢献することや,マルチモーダルAIへのデータ提供が期待される。

第6章:純粋中間財(一切最終消費されず他の製品の製造にのみ使われる財)に対する完全競争市場のモデルに焦点を充て、貿易における垂直的特化(国をまたいだ生産工程の分業化)に関する理論研究を概観するサーベイ論文である。このような市場構造は貿易における垂直的特化を分析する上で最も単純なものの一つである。この種のモデルは次のような国際貿易に関する疑問に対する重要なベンチマークを与える:どのような国がどのような生産工程に比較優位を持つか?(より直接的に、どのような基本的なメカニズムがグローバルサプライチェーンを形成するか?)貿易政策はグローバルサプライチェーンの下でどのような影響を与えるか?

目次

Preface
 
Chapter 1 A Theoretical Analysis of the Impact of Greenwashing and Information
      Transparency on Environmental Investment

 
 1.Introduction
 2.Literature Review
 3.Basic Model
 4.Effects of Disclosure Regimes
 5.Policy Implications
 6. Conclusion
 
Chapter 2 How Does Climate Change Affect Agricultural Productivity?
 
 1.Introduction
 2.Estimation Methodology
 3.Data
 4.Empirical Results
 5.Conclusion
 
Chapter 3 Prediction of Icefall Occurrence Using the GPV Data of Numerical Weather Prediction
 
 1.Introduction
 2.Target Area
 3.Data
 4.Methodology
 5.Results and Discussion
 6.Concluding Remarks
 
Chapter 4 Implementation of a Student-conducted Auction in Seminar I: Practice and Reflections
 
 1.Introduction
 2.Auction Implementation Environment
 3.Auction Implementation
 4.Conclusion
 
Chapter 5 A Development of a Means of Measurement for Both Physical Movements and
      Physiological Signals of Computer User

 
 1.Introduction
 2.Proposed Method
 3.Experiment
 4.Conclusion and Future Plans
 
Chapter 6 A survey of Theoretical Studies of Vertical Specialization in Trade under
      Perfect Competition Market for Pure Intermediate Goods

 
 1.Introduction
 2.Which Mechanism Is Being Discussed in Which Context ?
 3.Characteristics of Pure Intermediate Goods Approach
 4.Benchmark Models of Vertical Specialization
 5.Interaction between Vertical and Horizontal Specialization
 6.Offshoring and Task Trade
 7.Trade Induced Technology Adoption
 8.Concluding Remarks
 
Contributors

著者紹介

<編 者>
田神慶士(たがみ けいじ)広島修道大学経済科学部教授
研究分野:位相幾何学
 
塗師本彩(ぬしもと あや)広島修道大学経済科学部准教授(博士(経済学)、大阪大学)
研究分野:応用計量経済学、労働経済学
 
新宅公志(しんたく こうじ)広島修道大学経済科学部准教授(博士(経済学)、京都大学)
研究分野:国際経済学

<執筆者>
岩城達也(いわき たつや)駒澤大学文学部教授(博士(学術)、広島大学)第5章
研究分野:実験心理学、認知脳科学、感性情報学
 
岩田裕樹(いわた ひろき)広島修道大学人間環境学部教授(博士(経済学)、京都大学) 第1章、第2章
研究分野:環境経済学、環境政策、環境経営学
 
岡田啓介(おかだ けいすけ)関西大学経済学部教授(博士(経済学)、京都大学)第2章
研究分野:経済政策
 
新宅公志(しんたく こうじ)編者欄参照 第6章
 
田中藍子(たなか あいこ)広島修道大学経済科学部准教授(博士(経済学)、北海道大学)第4章
研究分野:公共財の自発的供給に関する研究、応用ゲーム理論
 
出木原裕順(できはら ひろゆき)広島修道大学経済科学部教授(博士(情報工学)、広島市立大学) 第5章
研究分野:多次元データ構造の開発と応用、ネットワークを利用した情報システム・アプリケーションの開発など
 
森岡一憲(もりおか かずのり)広島修道大学経済科学部教授 第3章
研究分野:財政・公共経済
 
森岡丈博(もりおか たけひろ)北海道大学大学院環境科学院博士課程 第3章
研究分野:気象・気候情報を活用した熱中症リスク評価、海洋熱波

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