内容紹介
1990年代からアメリカで繰り広げられてきた、合衆国史は誰のものかという歴史論争の中で、歴史教育カリキュラムは、ある意図に沿って登場人物や出来事が選ばれ、再形成されていった。しかし、こうした意図的な選択からこぼれ落ちた視野からも歴史を考える力の必要性を訴える、アメリカの歴史学者ワインバーグの考えは、現在のアメリカ教育関係者の間で多くの支持を得ている。では、そうした歴史的思考力の育成は、カリキュラムや学校現場のなかでどのように体現されているのだろうか。
本書は、アメリカ、特にニューヨーク州とイリノイ州に焦点をあて、歴史的思考力をいかに育成しようとしているのか、またそれを妨げるものは何かについて、政策レベルから教員養成・実践レベルまで幅広い視角から考察し、明らかにしようとするものである。両州の歴史教育のカリキュラムやテストの分析、実際の学校教育現場の参与観察などを行いつつ、イリノイ州については、いかにして歴史的思考力を育成できる歴史科教員を養成しているのか、その方策についても論じている。