植民地期台湾における女子青年団 教化、地域と女性の主体

著者名
宮崎聖子
価格
定価 7,480円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0395-0
仕様
A5判 上製 292頁 C3037
発行年
2026年3月
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内容紹介

台湾は、1895年から1945年にかけて、日本の植民地とされた。本書では、日本植民地期台湾において、若い女性たちの教化を目的に組織された社会教育、すなわち処女会・女子青年団について、民族・ジェンダー・階層等の差異に着目して史資料をもとに分析し、帝国がどのように人々を包摂し、排除したのかを検討した。また、元団員にライフヒストリーの聞き取りを行い、植民地において彼女たちが意思を持つ主体として行動し、地域を変えていった様子を描いた。

本書の目的は、1. マクロな視点から台湾総督府が処女会・女子青年団の政策を通して植民地女性をどのように「国民化」「皇民化」しようしていたのかを通時的に検討すること、また、2. ミクロな視点から、その政策の受け手であった女性たちや関係者の経験を検討し、女子青年団の諸相を捉えることである。

Ⅰ章では台北州を中心に1920年代後半~1930年、Ⅱ章では1923~1932年について、処女会が創設された後、女子青年団に転換するまでを描いた。うちⅡ章では、台湾の処女会を立ち上げた横尾広輔の実践も併せて検討した。Ⅳ章では1932年〜1936年において、女子青年団が本格始動し、修養を中心とした教化が全島に定着していく状況を述べた。Ⅵ章で扱った1936~1940年は、戦争が激化するなか、青年団が部落ごとに設置され、女子青年団の教化網が拡大伸展した。軍事的訓練も始まり、男性にかわり女子団員も地域の教化者としての役割を担ようになる。Ⅸ章では総力戦体制時期の1941年以降から1945年の解散までを描いた。女子青年団は1941年に男子と統合されて台湾青少年団に再編される。その後皇民奉公会の下部組織になるが、戦局が悪化した1945年6月に解散された。

Ⅲ、Ⅴ、Ⅶ、Ⅷ章では、女子青年団に関連する個別の項目について記述した。Ⅲ章では、ライフヒストリーの聞き取りにより、台北州における地域の指導者層、処女会指導者である公学校女性教員、処女会員、処女会員の家長に着目し、女性教員や会員における主体のありようを描いた。Ⅴ章では福岡玄洋社と関係があり、大アジア主義を標榜する田中一二夫妻により創設され、早くから軍事援護活動を行った内地人(日本人)の女子青年団に目を向けた。この女子青年団は、台湾総督府の方針に必ずしも沿ったものではなかった。Ⅶ章では、実業補習学校、女子青年学校と女子青年団との関係について検討した。Ⅷ章では1930年代後半から全島的に設置され、そこで女子青年団員が担い手となった国語保育園について述べた。

総督府による処女会・女子青年団政策は、男子と同様、被植民者を次第に帝国へ包摂していく道のりを辿った。組織が段階的に拡大し、収容員数も増えると、当初は富裕層のみであった対象が、次第に中下層まで拡大していった。しかしその過程や様態にはジェンダーによる差異や植民地政策による影響が色濃く現れていた。

また各章の後半では、元指導者や元団員へのインタビューをもとに、女子青年団に関係した諸個人の事例を示し、ミクロな視点から女性の実践について述べている。女子青年団に関わった女性たちは、女性として、被植民者として様々な抑圧のもとにあり、台湾の伝統的家父長制や日本の植民地主義の構造を再生産する役割を担ったが、一方で、それらに抵抗する主体でもあった。彼女たちが行動したことにより、台湾社会は変容していったのである。

目次

 はじめに
 凡 例
 
序論 植民地期台湾の女子青年団をめぐる先行研究と分析視角
 
 1. 研究の対象と目的
 2. 先行研究の検討
  2‒1 植民地期台湾の女性の教育・教化をめぐる研究
  2‒2 処女会、女子青年団をめぐる研究
 3. 植民地と女性をめぐる分析視角
  3‒1 女子青年団政策と女性の「国民化/皇民化」の問題
  3‒2 植民地における女性の主体と研究者の立ち位置
 4. 研究方法と本書の特徴
  4‒1 文献調査とフィールドワーク
  4‒2 新荘街の概要
  4‒3 本書の構成
 
Ⅰ章 台湾における処女会の創設と台湾青年団訓令(1920年代後半~1930年)
 
 1. 台湾における地方制度について
 2. 処女会の創設前夜  台北州、海山郡の事例
  2‒1 地方教化と女性団体の誕生
  2‒2 台北州海山郡鶯歌庄における女性教化の始まり
  2‒3 鶯歌庄における処女会の誕生
  2‒4 鶯歌庄処女会の活動状況
 3. 台湾青年団訓令の発布
 4. 台北州におけるその他の女子向け社会教育
 
Ⅱ章 処女会創設と地方視学横尾広輔(1923~1932年)
 
 1. 青年期教育者としての横尾広輔
 2. 台湾における処女会・社会教育・教化をめぐる官吏
 3. 横尾の略歴
 4. 処女会立ち上げの前夜
 5. 処女会の立ち上げ
  5‒1 横尾の台北州視学就任
  5‒2 女性教員への着目と講習会
  5‒3 地方巡回指導と幹部会員に対する講習
  5‒4 全島的な講習の開始
  5‒5 カリスマ指導者
 
Ⅲ章 新荘街における処女会と女性の主体
 
 1. 処女会関係者へのライフヒストリー・インタビュー
 2. 新荘処女会の女性指導者
 3. 新荘処女会の活動内容と運営
 4. 処女会員の語り
  4‒1 王笑
  4‒2 李雲桜
 5. 処女会関係者における民族・ジェンダー・階層・世代
 6. 隘路を縫って生きる主体
 
Ⅳ章 女子青年団の全島的展開(1932~1936年)
 
 1. 女子青年の統制強化と教育内容の拡充
  1‒1 女子青年団組織の確立
  1‒2 教化内容
 2. 教化部落設置と広がる女子青年団の組織網
 3.「内台共婚」と女子団員に対する帝国のまなざし
 4. 台北州と新荘街における女子青年団
 5. 台北州における女子青年団員の語り
  5‒1 陳面
  5‒2 王蘭
  5‒3 頼孔雀
 6. 学びの場としての女子青年団
 
Ⅴ章 内地人女子による台北女子青年団と田中夫妻(1930~1938年)
 
 1. 内地人と女子青年団
 2. 田中一二・きわの夫妻
 3. 台北女子青年団の概要
 4. 軍事援護中心の活動内容
 5. 異色の内地人女子青年団
 
Ⅵ章 戦争と組織の拡大  日本文化の伝播者へ(1936~1940年)
 
 1. 日中戦争と全島連合の完成
 2. 軍事的訓練の開始
 3. 紀元2600年記念全国女子青年団大会への台湾からの派遣
 4. 地域における女子青年団員の経験
  4‒1 曽秀蘭
  4‒2 陳麗月
  4‒3 呉沫
 5. ジャンピングボードとしての女子青年団
 
Ⅶ章 女子における青年団と実業補習学校、青年学校との関係
 
 1. 実業補習学校と青年学校
 2. 女子向け実業補習学校
 3. 女子青年学校
 4. 女子青年団の地位低下
 
Ⅷ章 台湾における国語保育園と女子青年団
 
 1. 国語保育園の呼称と性格
 2. 国語保育園の状況(1942年まで)
  2‒1 経営主体と設置場所
  2‒2 保育の担い手
  2‒3 経費
  2‒4 児童の年齢、保育期間、活動内容
  2‒5 親や地域の反応
 3. 国語保育園関係者の語り
  3‒1 佐藤玉枝
  3‒2 李麗玉
 4. 戦争の激化と国語保育園(1943年以降)
 5. 女性のはたらきと国語の浸透
 
Ⅸ章 台湾青少年団への統合と終焉(1941~1945年)
 
 1. 戦争の激化と女子青年団の台湾青少年団への統合(1941~1943年)
 2. 皇民奉公会傘下へ  女子労働力としての青年団とその終焉(1943~1945年)
 3. 各地における女子団員の語り
  3‒1 陳碧玉
  3‒2 蔡娣
  3‒3 洪雲嬌
  3‒4 陳泰子
 4. 団員とその経験の多様化
 
結論
 
 1. 台湾の処女会・女子青年団政策と女性の皇民化/国民化
 2. 処女会・女子青年団をめぐる諸個人の経験と女性の主体
 3. 今後の課題
 
 引用・参考文献
 あとがき
 索引

著者紹介

宮崎聖子(みやざき せいこ)
 
福岡女子大学国際文理学部教授。博士(人文科学、お茶の水女子大学)。
専門は文化人類学、ジェンダー研究、台湾研究。
 
主要著書
『植民地期台湾における青年団と地域の変容』(御茶の水書房、2008)
『植民地帝国日本における知と権力』(思文閣出版、2019、共著)
訳書
 ローレル・サッチャー・ウルリッヒ『ある助産婦の物語─マーサ・バラードの日記(1785‒1812)から』
(九州大学出版会、2025、共編訳)

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