子ども社会学 子どもの社会化研究

著者名
ジェラルド・ハンデル、スペンサー・E・ケイヒル、フレデリック・エルキン/住田正樹 訳
価格
定価 14,300円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ISBN
978-4-7985-0400-1
仕様
A5判 上製 642頁 C3037
発行年
2026年4月
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内容紹介

「子ども社会学」はいま、大きな転換期を迎えている。かつて子どもは「未熟な大人」あるいは社会化される受動的存在として理解されてきた。しかし、近年では子どもを日常生活の相互作用のなかで独自の意味を生み出し、他者との関係を築きながら自己を形成していく能動的主体として捉える視座が定着してきている。従来の機能主義的社会化論への批判を踏まえ、子どもの主体性や意思、経験を重視するシンボリック相互作用論的社会化論への理論的転換が進んできたのである。

本書は、こうした理論的転換を架橋する文献として、子どもの社会化過程を理論的・経験的両面において、体系的に再構成することを企図した本格的研究書である。出生から思春期に至る社会化過程を、子どもが他者との相互作用を通して能動的に自己を形成していく過程として捉え、豊富な実証的データと具体的な事例を織り交ぜながら緻密に分析している。

本書は4部構成である。第Ⅰ部では、子ども研究の方法論、人間の有機体的特質、子ども観の歴史的変遷について述べた上で、子どもの社会化過程を理論的に解明している。第Ⅱ部では、家族、学校、仲間集団、メディアといった社会化エージェンシーの作用を具体的な生活場面に即して検討し、養育様式、学校の組織構造や隠れたカリキュラム、仲間文化、メディアの影響が子どもの価値観や規範、行動様式の形成に及ぼす影響を実証的に分析している。第Ⅲ部では、階級、エスニシティ、ジェンダー、地域社会などの社会的・文化的差異に焦点を当て、そうした差異が教育機会や言語能力、しつけ様式、組織的活動への参加機会を通じて社会化に及ぼす影響を検討している。第Ⅳ部では、社会化を生涯過程の視点から捉え直し、青年期以降との連続性と非連続性について論じている。

本書は、理論的な緻密さと豊かな経験的裏付けを兼ね備えた本格的な「子ども社会学」の研究書であり、理論的転換の成果を総括することによって現代「子ども社会学」の到達水準を示すとともに、今後の研究の基盤となる基本的枠組みを提示している。子ども研究の理論的再構築を目指す研究者や大学院生にとっては不可欠の文献であり、一般読者にとっても子どもを理解するための新たな知的刺激に満ちた一書である。

目次

 はしがき
 謝辞
 著者について
 凡例
 
第Ⅰ部 子ども期の社会化の理論
 
序章 子ども期の社会化の理解
 
 はじめに
 1 子ども期の社会化の複雑性
 2 社会化研究の限界
 3 本書の構成
 
第1章 子どもの研究
 
 1 子どもと子ども期のイメージの競合
  (1) 子どもの自然な発達過程
  (2) 子どもの社会的教化
  (3) 子どもの社会的構築
 2 子どもの生活の複雑性の理解
 3 子ども研究の方法
 
第2章 社会化の基礎
 
 1 孤立した子どもたち
 2 人間という有機体
 3 生成し続ける社会
 
第3章 子ども期の文化的・歴史的構築
 
 1 社会化の異文化間比較
 2 非西洋社会の子どもたち
 3 西洋社会の子ども期の歴史
 4 文化的差異の継続  日本とアメリカにおける子どもの社会化  
 
第4章 社会化の基本的過程と成果
 
 1 社会と社会化
 2 感情的に重要な関係
 3 コミュニケーション
  (1) シンボル、言語、相互作用
  (2) 言語と記憶
  (3) 会話
  (4) 言語の習熟
 4 「重要な他者」の意義
  (1) 自我の発達
  (2) 遊びの段階とゲームの段階
 5 社会化の時間と成果
  (1) 自我についての考察
  (2) 自己概念、アイデンティティ、自尊感情、自己効力感
  (3) 情操と感情
  (4) 価値観と自我
  (5) 大人の役割に向けて
  (6) 短縮された子ども期と早まる大人への道
  (7) 社会的知識のストック
 
第Ⅱ部 社会化エージェンシー
 
はじめに
 
第5章 家族
 
 1 異文化間の比較
 2 地域社会と家族
 3 家族集団  相互作用する人々の集団  
 4 家族構成と相互作用
  (1) 初婚の二人親家族
  (2) ステップ・ファミリー
  (3) シングルマザー
  (4) 10代の母親
  (5) きょうだい関係
  (6) 21世紀の祖父母
 
第6章 学校
 
 1 幼稚園と保育所
  (1) ヘッドスタート
  (2) 保育所
 2 学校と社会
 3 組織としての教室
  (1) 権威
  (2) 学級規模
  (3) 評価
  (4) 道徳的環境
 4 家族と学校の相互作用
 
第7章 仲間集団
 
 1 仲間文化
  (1) 遊び
  (2) スポーツ
 2 仲間集団の構造と過程
  (1) 遊び集団
  (2) 友人関係
  (3) クリーク
  (4) いじめ
 
第8章 マス・メディア
 
 1 主要な論点
  (1) 視聴行動
  (2) 暴力的な番組内容と子どもの攻撃性
  (3) 広告の力
  (4) ジェンダーと人種のステレオタイプ化
 2 テレビ研究の方法論
  (1) 実験
  (2) 調査
  (3) 内容分析
  (4) 視聴者の解釈的反応
 3 子どもとテレビの関係性に関する理論
  (1) 利用と満足研究
  (2) 培養理論
  (3) 記号論
 4 コンピューター、インターネット、ビデオゲーム
  (1) コンピューターへのアクセス
  (2) 社会化への影響
  (3) ビデオゲーム
  (4) コンピューター、親の権威、子どもの自律性
 
第Ⅲ部 社会化の多様性
 
はじめに
 
第9章 社会階級
 
 1 上流階級
 2 中流上層階級
 3 中流階級
 4 労働者階級
 5 ワーキングプア
 6 アンダークラス
 7 社会階級と個人主義
 
第10章 エスニック・グループ、マイノリティー、近隣コミュニティ
 
 1 アフリカ系アメリカ人の社会化
 2 白人ヨーロッパ系エスニック・グループ
 3 ヒスパニック系、カリブ系、アジア系の移民
 4 近隣コミュニティ
 
第11章 性とジェンダーの社会化
 
 1 性別カテゴリーと社会組織
  (1) 性と社会的分業
  (2) 性とジェンダーのヒエラルヒー
 2 性の生物学
  (1) 性関連特性の発達
  (2) 氏か育ちか  遺伝と環境  
 3 社会化の過程と社会化エージェント
  (1) 家族内の相互作用
  (2) メディア
  (3) 幼稚園と学校
  (4) 仲間関係と仲間文化
 4 ジェンダーの社会化の複雑性
 
第Ⅳ部 子ども期からの連続性と非連続性
 
はじめに
 
第12章 社会化研究における回顧と展望
 
 1 青年期の社会化
  (1) 連続性
 2 成人期の社会化
  (1) 連続性
 3 老いと死の社会化
  (1) 連続性
 
 訳者あとがき
 文献
 訳注
 人名索引
 事項索引

著者紹介

ジェラルド・S・ハンデル(Gerald S. Handel)
 
シカゴ大学で人間発達学の博士号を取得。
ニューヨーク市立大学シティ・カレッジおよび同大学院センター名誉教授。
The Journal of Marriage and FamilySociological Inquiry の共同編集者を務めた。
1959年、両親のいる家族の子どもたちや親へのインタビューに基づいた最初の家族研究であり、
心理社会的アプローチから家族生活を研究した Family Worlds をロバート・D・ヘス(Robert D.
Hess)と共著で出版した。同年、労働者階級の女性たちについての先駆的研究であり、労働者
階級の生活様式と妻の価値観やライフスタイルを追究した Workingman’s Wife をリー・レイン
ウォーター(Lee Rainwater)、リチャード・P・コールマン(Richard P. Coleman)と共著で
出版した。また、2000年にはシンボリック相互作用論の立場から都市の労働者階級のライフ
コースを研究した Making a Life in Yorkville を出版した。
 
その他主要業績:
The Psychosocial Interior of the Family, 1967、共編著
The Apple Sliced: Sociological Studies of New York City, 1984、共編
Childhood Socialization, 1987、編著
Qualitative Methods in Family Research, 1992、共編
The Child and Society, 2007、共編著
Social Welfare in Western Society, 2009、単著

スペンサー・E・ケイヒル(Spencer Ernest Cahill)
 
カリフォルニア大学サンタバーバラ校で博士号を取得。
元サウスフロリダ大学教授。
Social Psychology Quarterly 編集長、The Journal of Contemporary Ethnography 共同編集者、
アメリカ社会学会「子どもと青年の部会」部会長を務めた。子どもや青年について論じた論文や
評論はその多くが Contemporary SociologySocial ProblemsSocial Psychology Quarterly
Sociological Quarterly に掲載されている。
 
主要業績:
Inside Social Life: Readings in Sociological Psychology and Microsociology, 2007、編者
Sociological Perspectives on Child Development, Volume 4: Perspectives of and on Children, 1991、編者

フレデリック・エルキン(Frederick Elkin)
 
シカゴ大学で博士号を取得。
トロントのヨーク大学名誉教授。ミズーリ大学、マギル大学、モントリオール大学で教鞭を執る。
また公的機関の報告書を数多く執筆し、多数の学術論文の執筆や研究書の編集にも携わった。カ
ナダ社会学・人類学学会の会長を務め、ヴァニエ家族研究所の名誉会員でもあった。
 
主要業績:
The Family in Canada, 1964、単著
Rebels and Colleagues: Advertising and Social Change in French Canada, 1973、単著
Volunteers, Voluntary Associations and Development, 1981、共編
The Child and Society, 1960、共著者、第二版からは共編者

住田正樹(すみだ まさき)
 
慶應義塾大学文学部卒業(社会学専攻)。東京大学大学院教育学研究科博士課程退学(教育社会学
専攻)。香川大学助手、講師、助教授を経て1982年、九州大学教育学部助教授。1991年、九州大学
教育学部教授、2000年、九州大学大学院人間環境学研究院教授を経て2005年、放送大学教授。
現在は九州大学名誉教授、放送大学名誉教授。博士(教育学、九州大学)。
 
〈主要著書・訳書〉
著 書:
『子どもの仲間集団と地域社会』(九州大学出版会、1985)
『子どもの仲間集団の研究』(九州大学出版会、1995)
『地域社会と教育』(九州大学出版会、2001)
『子ども社会学の現在』(九州大学出版会、2014)
『人間発達論』(左右社、2021)
編著書:
『現代教育学を学ぶ』(共編著、北樹出版、1996)
『子どもの発達と現代社会』(共編著、北樹出版、2002)
『子どもたちの「居場所」と対人的世界の現在』(共編著、九州大学出版会、2003)
『教育文化論』(共編著、放送大学教育振興会、2005)
『生徒指導』(共編著、放送大学教育振興会、2006)
『子どもへの現代的視点』(共編著、北樹出版、2006)
『人間発達論』(共編著、放送大学教育振興会、2009)
『子どもと家族』(編著、学文社、2010)
『子どもと地域社会』(編著、学文社、2010)
『児童・生徒指導の理論と実践』(共編著、放送大学教育振興会、2011)
『子どもの発達社会学』(共編著、北樹出版、2011)
『家庭教育論』(編著、放送大学教育振興会、2012)
『人間発達論特論』(共編著、放送大学教育振興会、2015)
『変動社会と子どもの発達』(共編著、北樹出版、2015)
訳 書:
『教育社会学』(共編訳、九州大学出版会、2004)
『リトルリーグの社会学』(監訳、九州大学出版会、2009)
『ピア・パワー』(監訳、九州大学出版会、2017)

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