油症研究2 治療と研究の最前線
内容紹介
化学物質による環境汚染,なかでもダイオキシン類による環境汚染は人類の負の遺産としてしぱしぱ取り上げられる。油症は1968年に発生した高濃度のPCB類・ダイオキシン類による人体汚染である。あらゆる臓器に高濃度に蓄積したダイオキシン類は,様々な症状を発生させ,40年を経た現在でも血中で検出される。本書は2000年に『油症研究 30年の歩み 』を刊行して以後の10年間の最新の研究成果を収めたものである。
目次
本書の刊行に寄せて
油症研究の回顧と現状および今後の課題 古江増隆,赤峰昭文,佐藤伸一,山田英之,吉村健清
略語
第1部 生体濃度
第1章 油症検診での血液中化学物質(PCB,PCQ,PCDF)の濃度測定法の開発と変遷 飯田隆雄,戸高 尊
1.1 PCBの分析
1.2 PCQの分析
1.3 PCDFの分析
第2章 油症検診受診者における血液中PCB濃度の測定 堀 就英
2.1 血液中PCB測定による油症診断
2.2 血液中PCB異性体分離分析法への移行
2.3 2004年度油症検診受診者の血液中PCB分析 油症発生から36年経過時点のPCB体内残留
2.4 2006年度油症検診受診者の血液中PCB分析 油症患者と一般住民との比較
2.5 油症検診受診者の血液中PCB濃度の経年推移(2004~2007年度)
第3章 油症検診受診者における血液中PCQ濃度の測定 中川礼子
第4章 油症患者の血液中PCDF濃度の測定 梶原淳睦
4.1 概要
4.2 油症患者の血液中PCDF濃度
第4章補論 長崎県における油症患者の血液中PCB・PCQ濃度の測定 山之内公子
4補.1 はじめに
4補.2 分析方法
4補.3 結果
第5章 油症検診データベース システムの構築と変遷 片岡恭一郎,高尾佳子,小野塚大介,吉村健清
5.1 はじめに
5.2 油症検診データベース構築の変遷
5.3 油症検診データベースシステムの現状
5.4 油症検診データベースシステムの今後の展望
第6章 全国油症検診結果の総括 片岡恭一郎,高尾佳子,小野塚大介,吉村健清
6.1 はじめに
6.2 全国油症検診受診者の概要
6.3 臨床所見の概要
6.4 まとめ
第7章 油症患者におけるPeCDFの残留濃度と半減期 松本伸哉,赤羽 学,神奈川芳行,小池創一,今村知明
7.1 PeCDF半減期のこれまでの報告
7.2 油症の各患者の半減期の分布
7.3 男女別の各患者の半減期の分布
7.4 PeCDF濃度別の各患者の半減期の分布
7.5 まとめ
第8章 全国油症検診受診者における2,3,4,7,8-五塩化ジベンゾフラン(PeCDF)レベルの時間変化 徳永章二
8.1 はじめに
8.2 対象者と方法
第9章 胎児性油症の原因物質もポリ塩化ダイベンゾフラン 長山淳哉
9.1 緒言
9.2 分析した保存臍帯
9.3 保存臍帯中のダイオキシン類とPCBs濃度
9.4 胎児性油症の原因物質
9.5 総括
第2部 臨床
第1章 油症診断基準改訂(2004年)の経緯 古江増隆,三苫千景,内 博史
1.1 はじめに
1.2 油症とPCBs, polychlorinated quarterphenyl (PCQs), PCDFs
1.3 油症検診とダイオキシン類の測定
1.4 新しい診断基準の作成
第2章 油症患者における血中PeCDF値と症状や血液検査等との関係
神奈川芳行,松本伸哉,赤羽 学,小池創一,今村知明
2.1 油症患者のPCB関連化合物の血中濃度(2001~2003年度の油症検診から)
2.2 2001~2003年度の検診結果の平均値と,血中PeCDF値と症状等の関係について
2.3 油症患者の症状・徴候の比較;発症20年後(1988年)と約35年後(2001~2003年)
2.4 油症検診における代表的な検査項目と,血中PeCDF濃度の高低との関係
第3章 油症患者における骨・関節症状の実態 岩本幸英,福士純一
3.1 油症発生初期における骨・関節症状
3.2 現在の油症患者における骨・関節症状
3.3 油症患者における骨密度
第4章 油症における産科・婦人科系の異常 月森清巳,諸隈誠一,大寺由佳
4.1 油症における妊娠異常と胎児・新生児異常
4.2 油症における女性性機能
4.3 油症における婦人科疾患
第5章 油症における内分泌機能と免疫機能 辻 博
5.1 油症における内分泌機能と免疫機能
5.2 油症における内分泌機能
5.3 油症における免疫機能
第6章 油症患者の死因分析 小野塚大介,吉村健清
第7章 油症における酸化ストレス 清水和宏
第8章 油症におけるクレアチンキナーゼ 吉村俊朗,中野治郎,沖田 実,北村 喬
8.1 はじめに
8.2 血清CKの経年変化
8.3 血清アルドラーゼ(ALD)
8.4 カネミ油症検診者の血清CK上昇の要因
8.5 その他
8.6 まとめ
第9章 油症における皮膚症状 特に血中ダイオキシン類濃度との関連性について
内 博史,三苫千景,古江増隆,中山樹一郎
9.1 はじめに
9.2 2001年以前
9.3 2001年以後
9.4 その他のダイオキシン類中毒事件
9.5 考察
9.6 年次検診で観察した油症皮膚病変の最近10年間の推移
第3部 基礎研究
第1章 ダイオキシンの後世代影響とその機構 山田英之,石井祐次,石田卓巳
1.1 はじめに
1.2 TCDDのステロイドホルモン合成への影響
1.3 胎児ステロイド合成系低下の機構
1.4 ゴナドトロピン障害と性行動抑制のインプリンティング
1.5 おわりに
第2章 ダイオキシン毒性を軽減する物質の探索 食用食物成分を中心として 石田卓巳,石井祐次,山田英之
2.1 緒論
2.2 食用食物成分によるダイオキシン毒性の軽減
2.3 おわりに
第3章 高残留性PCB類の代謝および代謝物の毒性評価 古賀信幸,太田千穂
3.1 はじめに
3.2 PCBの水酸化反応とメチルチオ化反応
3.3 ヒト血中に残留するPCB代謝物の親PCBの探索
3.4 PCB代謝に関与するチトクロムP450
3.5 PCB代謝物の毒性評価
3.6 最後に
第4部 治療
第1章 油症に対する漢方治療 内 博史,徳永章二,三苫千景,古江増隆
1.1 はじめに
1.2 試験の概要
1.3 統計学的方法
1.4 結果
1.5 考察
第2章 玄米発酵食品の摂取による油症原因物質の体外排泄促進 長山淳哉
2.1 はじめに
2.2 玄米発酵食品ハイ・ゲンキ(スピルリナ入)
2.3 研究協力者と研究プロトコル
2.4 ハイ・ゲンキ(スピルリナ入)の血中濃度への影響
2.5 ハイ・ゲンキ(スピルリナ入)の体外排泄促進効果
2.6 まとめ
[特別寄稿] 子どもの健
康と環境に関する全国調査(エコチル調査)について 塚本直也,丹藤昌治
1. 背景
2. 子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の概要
3. 調査の中心仮説について
4. 実施計画
5. パイロット調査
6. 国民とのコミュニケーションと産学官の連携
7. 国際協力
8. 調査費用と契約
9. まとめ
[付録]
付録1 油症の診断基準と治療指針など
付録2 ”奇病” の原因究明のために昭和43年に結成された九州大学油症研究班の臨床部会,分析専門部会,疫学部会の構成員
付録3 油症研究班,油症治療研究班の年表
付録4 九州大学油症治療研究班ならびに全国油症治療研究班が開催したセミナーその他検討会議
著者紹介
古江 増隆 九州大学大学院医学研究院皮膚科学分野教授,九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センター長
赤峰 昭文 九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座教授
佐藤 伸一 東京大学大学院医学系研究科皮膚科学教授
飯田 隆雄 北九州生活科学センター理事長
戸高 尊 九州大学大学院医学研究院皮膚科学分野学術研究員
堀 就英 福岡県保健環境研究所専門研究員
中川 礼子 福岡県保健環境研究所研究員
梶原 淳睦 福岡県保健環境研究所専門研究員
山之内 公子 長崎県環境保健研究センター生活化学科専門研究員
片岡 恭一郎 福岡県保健環境研究所研究員
高尾 佳子 福岡県保健環境研究所主任技師
小野塚 大介 福岡県保健環境研究所主任技師
吉村 健清 福岡県保健環境研究所所長,産業医科大学名誉教授
松本 伸哉 東京大学医学部附属病院企画情報運営部
赤羽 学 奈良県立医科大学健康政策医学講座講師
神奈川 芳行 東京大学医学部附属病院企画情報運営部
小池 創一 東京大学医学部附属病院企画情報運営部准教授
今村 知明 奈良県立医科大学健康政策医学講座教授
徳永 章二 九州大学病院医療情報部助教
長山 淳哉 九州大学大学院医学研究院保健学部門環境分子疫学系准教授
三苫 千景 九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センター助教
内 博史 九州大学病院油症ダイオキシン研究診療センター准教授
岩本 幸英 九州大学大学院医学研究院整形外科学講座教授
福士 純一 九州大学病院整形外科助教
月森 清巳 福岡市立こども病院周産期医療企画部長
諸隈 誠一 九州大学病院産科婦人科助教
大寺 由佳 九州大学大学院生殖病態生理学大学院生
辻 博 北九州津屋崎病院内科部長
清水 和宏 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻病態解析・制御学講座皮膚病態学分野准教授
吉村 俊朗 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻理学作業療法学講座教授
中野 治郎 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻理学作業療法学講座助教
沖田 実 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻理学作業療法学講座教授
北村 喬 財団法人長崎原子爆弾被爆者対策協議会中央診療所顧問
中山 樹一郎 福岡大学医学部皮膚科学教室教授
石井 祐次 九州大学大学院薬学研究院分子衛生薬学分野准教授
石田 卓巳 九州大学大学院薬学研究院分子衛生薬学分野助教
山田 英之 九州大学大学院薬学研究院分子衛生薬学分野教授
古賀 信幸 中村学園大学栄養科学部教授
太田 千穂 中村学園大学栄養科学部助教
塚本 直也 環境省環境保健部環境安全課環境リスク評価室室長
丹藤 昌治 環境省環境保健部環境安全課環境リスク評価室室長補佐