九州大学出版会 Kyushu University Press

内容紹介

最近の国際食料市場の混乱や輸入食品の安全に関する問題の発生は，日中韓3カ国に，食料・食品の安全問題のリスクの大きさを認識させることとなった。食料の安全性の確保に関して政府間では協議が進んでいるが，3カ国の国民や農業者の間の相互信頼醸成はまだ不十分であり，流通業者・加工業者を含めた食品サプライチェーン全体の安全・安心を担保する民間の仕組みはできていない。実情に即した現実的な解決手段や，3カ国間の協調方策を模索する。

目次

まえがき　　福田　晋
 
第1章　日本におけるフードシステムの安全性と消費者信頼の確保　　中嶋康博
　1．はじめに　　
　2．食品のリスク　　
　3．安全衛生管理の課題
　4．食品安全政策と食品表示制度
　5．トレーサビリティの必要性
　6．回収措置における課題
　7．食品偽装事件と食の信頼回復
 
第2章　韓国におけるフードシステムの安全性確保　　李　炳旿
　1．はじめに
　2．食品安全事故の発生動向
　3．食品安全管理体制の現状
　4．食品安全管理の主要手段
　5．食品安全管理体系の改善方向
　6．結論
 
第3章　中国におけるフードシステムの安全性確保　　王　志剛
　　　　　　　認証制度を事例として
　1．はじめに
　2．中国農政の概要及び日本との貿易現状
　3．中国における食品安全性確保の現状
　4．中国における食品安全性確保に関する法制度の内容と特徴
　5．認証制度に関する文献の整理
　6．飼料産品認証の実証分析
　7．計測結果
　8．結論
 
第4章　農業者と消費者の食の安全意識　　南石晃明
　　　　　　　予備調査に基づく比較分析
　1．はじめに
　2．調査の対象と方法
　3．調査結果および考察
　4．おわりに
 
第5章　韓国における農産物の安全性制度に対する消費者の信頼と改善方案　　愼　鏞光・崔志弦
　1．はじめに
　2．食品の消費支出の変化
　3．農産物の一般的な特性と安全性の管理制度
　4．農産物の安全性の管理制度に対する消費者の信頼度
　5．農産物の安全性制度の改善方案
 
第6章　フードシステムに対する消費者の信頼とリスク・コミュニケーション　　曽　寅初
　　　　　　　食品安全事件の影響と対策を中心に
　1．はじめに
　2．食品安全リスク認知とその重要性
　3．食品安全リスク認知と食品購買行動
　4．情報の提供と情報提供者に対する消費者の信頼
　5．食品安全事件とリスク・コミュニケーション
　6．おわりに
 
第7章　むすびにかえて　　福田　晋
　　　　　　　東アジアにおける信頼できるフードチェーンの確立に向けた展望
　1．はじめに
　2．食の安全と安心の確保
　3．農産物輸入の増大と食料自給率
　4．顔の見える関係づくりと真の消費者主権　　「農」と「食」の連携の強化　　
 
あとがき　　福田　晋

著者紹介

福田　晋（ふくだ　すすむ）　九州大学大学院農学研究院教授
九州大学准教授を経て，2009年より現職。専門は農業経済学，食料流通学。編著書に『食品の安心・安全の経済分析』（九州学術出版振興センター）など多数。

中嶋康博（なかしま　やすひろ）　東京大学大学院農学生命科学研究科准教授
東京大学助手を経て，1996年より現職。専門は農業経済学。著書に『食品安全問題の経済分析』（日本経済評論社）など多数。

李　炳旿（リ　ビョンオー）　韓国江原大学校教授
1984年韓国東亜大学助教授。1987年より現職。2002~2004年同学部長。専門は食料経済学など。米国イリノイ大学，中国延辺大学の客員教授を歴任。韓国農業経済学会副会長。

王　志剛（ワン　ジガン）　中国人民大学農業与農村発展学院教授
九州大学助手，中国人民大学農業与農村発展学院教授副教授を経て，2010年より現職。

南石晃明（なんせき　てるあき）　九州大学大学院農学研究院教授
（独）農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センターを経て，2007年より現職。専門は農業経済学。編著書に『東アジアにおける食のリスクと安全確保』（農林統計協会）など多数。

愼　鏞光（シン　ヨンガン）　韓国農村経済研究院農業観測情報センター野菜観測チーム長
論文に「畜産の政策手段と生産性変化に関する研究」（2008年）など多数。

崔　志弦（チェ　ジヒョン）　韓国農村経済研究院農食品政策研究本部長
論文に「ISO22000の効率的な導入方案に関する研究」（2006年）など多数。

曽　寅初（ソ　エンショ）　中国人民大学農業与農村発展学院教授
中国人民大学農業経済学系助手，中国人民大学農業与農村発展学院講師，同副教授を経て，2005年より現職。主要研究領域は，食料経済学，開発経済学。

その他