人文科学
御津の浜松一言抄
- 定価 3,960円(税率10%時の消費税相当額を含む)
夢と転生に彩られた甘美な恋物語という従来の解釈から、二人の男が互いの想い人を奪い合う、「恋の闘争」の物語へ 『無名草子』において平安後期物語の三大傑作に数えられながら、近世以前に首尾を逸亡させ、国学者たちによる研究も不発に終わった『浜松中納言物語』(原題「御津の浜松」)は、昭和初期に最終巻の伝本が二本発見されたことにより、研究史上の新時代を迎えた。以来、八十年余りを経て、その間には優れた注釈書も著され、読解のための環境は整ったように見えるのだが、実際にはどうなのか。本書は、最終巻前半に見える主...
エリザベス朝史劇と国家表象
- 定価 6,380円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ヘンリー8世からエリザベス1世そしてジェイムズ1世が統治した初期近代は、イングランドが近代的国家体制の構築に向かう時期に当たる。イングランド国教会の設立に代表される政治的・宗教的言説流通の中で、国家意識の急激な高まりは多くの年代記とイングランド史劇を中心とする歴史劇を生み出した。本書は、16世紀初頭から1642年の劇場閉鎖までの時期に創作された50編ばかりの全歴史劇を対象に、個別のイングランド史劇に描き込まれた国家表象(イングランド表象)の有りようを時系列に沿って網羅的に記述した、演劇史研究であ...
麻生太吉日記 第四巻
- 定価 11,000円(税率10%時の消費税相当額を含む)
昭和3年から6年にいたる金融恐慌・昭和恐慌の時期の炭鉱経営者・電力経営者麻生太吉の日記。麻生は鈴木商店の破綻によって破産した帝国炭業を引き受け、九州鉱業を設立する。九州水力電気の社長を引き受け、本社を東京から福岡に移転する。石灰事業では輸送の充実を図 り、金宮鉄道を設立し九州産業鉄道に合併し、セメント事業参入への足場を築いた。経営者麻生太吉が最も充実した晩年の姿を記録する。 (さらに…)
知覚・言語・存在
- 定価 5,940円(税率10%時の消費税相当額を含む)
20世紀フランスの代表的哲学者メルロ=ポンティは、世界とは何か、自己やその生とは何か、あるいは世界と自己の原初的で根源的な関係はどのようになっているのかなど、古代ギリシア以来現在に至るまで侃々諤々の議論が絶えない哲学の根本諸問題に対して、透徹した洞察力と事象そのものに促された両義性という両立しがたい観点から他に類を見ない一貫した表現力によって接近している。本書は、存在、知覚、身体、言語、歴史、芸術、倫理などのテーマを手がかりに、彼の哲学との対話と対決の中から紡ぎ出されたものであり、テーマの多様性...
佐賀藩多久領 御屋形日記 第三巻
- 定価 3,300円(税率10%時の消費税相当額を含む)
旧佐賀藩の家老で多久領主であった多久家の御屋形日記の翻刻と校註。今回は元禄三年八月~五年七月にかけての部分を取り上げる。多久領の支配と民衆生活を窺うことのできる史料である。 (さらに…)
Derivational Feature-based Relativized Minimality
- 定価 7,920円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書は、イタリア語、英語、日本語における疑問詞、焦点要素、話題化要素などの語順制限と介在効果に関する統語論の研究書である。特に、単一文に二つの移動が生じる場合の介在効果の事実を収集・精査し、それらを並行移動や分離移動などの独創的な移動操作と派生的な相対的最小性の原理により分析する。さらに、同分析を、英語の焦点化構文(重名詞句移動、there構文、場所句倒置文)や、日本語のwh句と焦点化要素の介在効果に拡張し、それらの構文を統一的に説明する。また、そもそも意味と音をつなぐ適切な統語構造はどのように...
大清帝国と朝鮮経済
- 定価 8,580円(税率10%時の消費税相当額を含む)
朝鮮王朝後期、清の再侵攻に備え膨大に蓄えられた銀や銅銭が緊張緩和に伴い国庫から市場へと滲出し、手工業大国中国と鉱産資源大国日本との狭間で人蔘輸出と銭本位制による"国民経済"が準備されていった。李祘(イ・サン)や張禧嬪 (チャン・ヒビン)が生きた17~18世紀の朝鮮経済史を、史実の着実な検証により解明する。 (さらに…)
九州大学文学部90年の歩み
- 定価 1,100円(税率10%時の消費税相当額を含む)
2014年,九州大学文学部がその前身である九州帝国大学法文学部の創設から起算して90周年を迎えるのを記念して,これまでの歴史を『九州大学文学部90年の歩み』としてこのたび刊行しました。『九州大学百年史』部局史編 I(九州大学のWeb上で本年公開予定)の「文学部編」から収録する本編の「文学部通史」「研究室史」と,資料編の「人事資料」「統計資料」「文学部年表」からなり,写真も約30点収録。文学部のこれまでの歴史を振り返ります。全国で活躍する卒業生には必読です。 (さらに…)
ヤン・パトチカのコメニウス研究
- 定価 4,840円(税率10%時の消費税相当額を含む)
パトチカは,フッサールやハイデガーに学んだチェコ20世紀を代表する哲学者として知られるが,激動のチェコ20世紀に三度大学を追われ,最後は官憲の取り調べのなかで死去した。彼は現象学や歴史哲学の研究で知られるが,彼の祖国が生んだ17世紀の教育思想家コメニウスの研究にも多くの業績を残した。コメニウスを近代教育の先駆者として位置づける啓蒙主義的な解釈も歴史的な断絶を強調する実証主義的な解釈も批判する彼の方法論は,思想史研究のひとつの範型といえる。同時に彼は,過去の思想が現在に語りかけてくることの意味を考...
近代文学の橋
- 定価 5,940円(税率10%時の消費税相当額を含む)
近代文学を発展させた作家たちは様々な問題に取り組んでいた。表現体において「言文一致体」がその諸問題に対する解決案の一つであったが,近世から近代にかけて,文学の意味内容も吟味されるようになった。文芸的思潮の流れの中で「橋」は作中に数多く登場しているが,この頻出の原因は一体何だろうか。本書は,橋が登場している近代文学の複数の名作において,「橋」が如何に描写されているのか,その箇所が如何に作品全体の意味合いに貢献しているのかを調査するものである。イデオロギーなどを主題の一つとして取り上げる近代の小説家...