人文科学
古代東アジアの知識人 崔致遠の人と作品
- 定価 5,280円(税率10%時の消費税相当額を含む)
『古代東アジアの知識人崔致遠(さいちえん)の人と作品』(九州大学韓国研究センター叢書2)は九州大学教育研究プログラム・研究拠点形成プロジェクト(P&P/B2)として採択された「崔致遠撰『桂苑筆耕集』に関する総合的研究」(平成十三年度~ 十四年度)と科学研究費補助金(基盤研究〈B〉平成十七年度~ 平成十八年度)「朝鮮古代の文人官僚・崔致遠の人と作品に関する歴史文学的研究」の研究成果を選択的に整理し編集した論集である。 二つの研究プロジェクトの課題は、日本の東洋学の成果に基づき、朝鮮学の研究...

麻生太吉日記 第三巻
- 定価 11,000円(税率10%時の消費税相当額を含む)
大正後期から昭和への改元を見るこの時期は、麻生太吉にとっても多難な時期であった。第一次大戦の反動不況に加え関東大震災の発生による経済不況に対応すべく三井・住友等と連絡を図りながら福岡県下の中小銀行の合同や信託銀行の設立を企図した。他方、炭鉱事業においては鈴木商店系の炭鉱を傘下におさめ、セメント事業の展開のため鉄道輸送の充実展開を図った。麻生太吉が主要な役割を果たした九州水力電気は宮崎県・熊本県へ進出している。政治的にも貴族院議員の辞職、政友会の分裂の中で、程度大切油断大敵を心に刻んでいる。 (さ...

リヒトホーフェン日本滞在記
- 定価 3,740円(税率10%時の消費税相当額を含む)
幕末から明治初期に日本を訪れ,滞在記や日本および日本人に関する著作を著した外国人は数多い。R. オールコックやE. サトウのような英国人外交官の諸著作が有名であるが,本書のようにドイツ人の著した滞在記は珍しい。本書は幕末の1860年と明治初年の1870年の二度にわたり訪日を果たした,プロイセン出身の近代地理学の大家フェルディナント・フォン・リヒトホーフェン(1833~1905)が日本滞在中の体験を記した日記の翻訳である。一度目目の滞在記では江戸とその周辺の印象,幕府との条約締結交渉の過程や攘夷に...

フィヒテの社会哲学
- 定価 8,580円(税率10%時の消費税相当額を含む)
グローバル時代,多元的な世界の時代を迎え,カントの法哲学が復権され,ヘーゲルもまたネオ・プラグマティズムからのアプローチによって再発見されつつある。しかるに両者の中間にいたフィヒテは,ドイツ・ナショナリズムの悪しき煽動者,国粋的な国家主義による全体主義社会の思想家,ナチズムの起源の一人として,依然として闇に葬られたままである。その理由の一つは,フィヒテの社会哲学を総体的に見ようとせず,自分の政治的立場に都合のよい文言だけをつまみぐいして,フィヒテの思想だと述べてきた研究者たちの姿勢にもあるだろう...

『白痴』を読む
- 定価 3,520円(税率10%時の消費税相当額を含む)
あまりにも鋭い人間的洞察力を与えられたとき,人間は白痴のように見えるのかも知れない。『白痴』の主人公ムイシキン公爵は癲癇という病気のもとに神秘的とまで見える洞察力をもって19世紀ロシアを遍歴する。近代の大都会に跳梁する道化群像の只中にあって,彼ひとり揺るがぬ魂のユートピアを願って生きる。しかし恐るべき愛憎の渦へと巻き込まれて破滅の運命をたどることになる。謙抑に満ち,人を裁くことのない無垢の魂が,何故悲劇をとどめ得なかったか。『白痴』という小説の謎はその一点にきわまるが,それは公爵のうちなる虚無の...

「空間」のエリザベス朝演劇
- 定価 5,720円(税率10%時の消費税相当額を含む)
中世後期から近代初期へと移り変わる転換期の社会の諸相をダイナミックに描いたエリザベス朝演劇。本書では「空間」と人との関係に注目して,エリザベス朝演劇の代表的諸作品 『フェヴァシャムのアーデン』『優しさで殺された女』『錬金術師』『靴屋の祭日』『リア王』『シンベリン』『復讐者の悲劇』『ビュッシイ・ダンボア』『白悪魔』『チェンジリング』など における私室,地域社会,都市,国家,宇宙,そして人間の内的空間まで,初期近代の激動期を生きるひとびとの空間認識の深まりを読み解く。 (さらに…)

発話解釈の語用論
- 定価 4,180円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書は,関連性理論に基づく語用論の研究書である。前半では,その基本的な概念や枠組みを整理した上で,語用論における重要な課題である会話の含意や発話行為などを関連性理論の視点から捉え直している。本書の後半はその事例研究である。英語の談話連結語after allや日本語の接続表現「だって」の多様な用法について,符号化された手続きを定義することでその一義的説明を行っている。一方,文法化の議論においても関連性理論の貢献は少なくない。18世紀と現代の2つのコーパスの比較に基づく after all の文法化...

生命の倫理3
- 定価 3,520円(税率10%時の消費税相当額を含む)
19世紀に誕生した優生思想は今日も生き続け,修正的優生政策を推進する国々においては,新型出生前診断による胎児の選別を進める中で,本著はタイムリーな出版であるといえよう。優生学の政策化は米国において開始され,アジア進出に伴い日本においても政策化が進められた経過が明示されている。また,日本の中国植民地政策下における優生学の役割,さらに日本のハンセン病者への断種政策と優生学の関わりを解説している。 (さらに…)

小林方言とトルコ語のプロソディー
- 定価 5,060円(税率10%時の消費税相当額を含む)
宮崎県の一方言である小林方言と,アジアの西端に位置するトルコ共和国で話されているトルコ語。本書は,これら遠く離れた地域で話されている二つの言語のプロソディーに注目する。小林方言とトルコ語が持つ「一型アクセント」という特徴を詳細に観察していくと,一見全く異なる二つの言語に様々な共通点が浮かび上がる。新たな視点で対照研究を行い,言葉の仕組みを探るとともに,言葉の固有と普遍に迫る一冊である。 (さらに…)

背表紙キャサリン・アーンショー
- 定価 3,740円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書はそれぞれ四章から成る「自己の中の外部」、「自己と外部」と題する二つの部で構成され、全体で七編の19世紀、20世紀のイギリス小説を考察する。 第一部の題「自己の中の外部」は、自覚的な意識が及ばない、自己の中のいわば外部である無意識を指している。今日私たちは、フロイトやラカンの高度に洗練された精神分析の知見の影響下にあるが、19世紀のイギリスの作家たちは、「無意識」についてもっと素朴な洞察を独自に持っていて、それを作品に描いている例があると考えられる。本書の第一部の目的は、個々の作品に固有の問...
