人文科学 歴史・地理
夕闇の時代
- 定価 7,920円(税率10%時の消費税相当額を含む)
第一次大戦をヨーロッパ文明の衰亡の過程として受け止めた大部分のイギリス人は、戦争を勝利で終えたにも関わらず、不安と恐怖と黙示録的幻想をもちつづけ、危機の言説を形成した。終戦は新しい時代のはじまりというよりも、むしろもっと恐ろしい災禍へ向かう通過点として捉えられたのだった。災禍を未然に防ごうと、大規模な反戦運動が展開され、歴史学、経済学、心理学、生物学、遺伝学などの一連の科学者は戦争の原因を究明しようとした。トインビー、ホブソン、ケインズ、ウェブ夫妻、フロイト、ハクスリー兄弟、ウェルズら著名な知識...
古代ローマ人の都市管理
- 定価 1,980円(税率10%時の消費税相当額を含む)
古代ローマ人にとっては、都市そのものが国家であり、都市は彼らにとって投資の対象でもあった。彼らは都市を建設しただけでなく、資産として管理したのである。後1世紀のローマは人口100万人を擁する帝国の首都であり、人類史上かつてないほどの過密都市であった。一方、現在のナポリ湾に面するポンペイは、人口1万人余りの豊かで美しい地方都市であったが、後79年にウェスウィウス火山の噴火によって消滅する。このとき、首都ローマで巨大な円形闘技場、すなわちコロッセウムの建設が進む一方で、この地方都市は後62年の大地震...
今と昔の長崎に遊ぶ
- 定価 2,640円(税率10%時の消費税相当額を含む)
長崎の地に住んだ人びとがどのように長崎の文化を形作ってきたのか、長崎の歴史・文化・経済・言語・哲学など様々な分野の研究者が解説し、長崎の隠された魅力をさらに深く探求していく。長崎は諸外国との窓口の役割を長らく果たしてきた。ポルトガル・オランダ・中国を始め、外国の文化が流れ込み、日本の文化と融合した都市、それが長崎である。つまり、グローバル化が叫ばれる現代に先駆けて、数百年も前からグローバル化が行われてきた。その長崎文化の魅力と本質を長崎という文化空間に即して解明すること、いうなればグローカルな視...
古代ローマ人の危機管理
- 定価 1,980円(税率10%時の消費税相当額を含む)
「人類の歴史の中でもっとも平和な時代はいつか?」という問いに答えるのはとても難しい。時代だけでなく、場所も限定して考えなければならないが、前1世紀から後3世紀にかけて栄華を誇り、パクス・ロマーナと呼ばれる平和を実現した古代ローマ帝国は、その有力な候補と言えよう。本書では、その古代ローマ帝国の「平和な時代」を、「戦争のない時代」ではなく、「危機管理に成功した時代」であったと捉える。古代ローマの歴史家、ウェッレイウス・パテルクルスは、アウグストゥス帝が帝国の隅々までもたらした平和によって、人々は追い...
世界遺産 キリシタンの里
- 定価 1,980円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書は「長崎県長崎学アドバイザー」である著者が長崎・天草の潜伏キリシタンの里を訪ね、史料をもとにその魅力と知られざる歴史を分かりやすく解説する、世界文化遺産「長崎と天草の潜伏キリシタン関連遺産」初の網羅的入門書です。縦軸としてキリスト教伝来から繁栄、禁教・弾圧、潜伏、復活の歴史を述べるとともに、横軸として長崎、浦上、平戸、外海(そとめ)、五島列島など現地をたずね、著者が直接学んだことを中心に展開しています。それぞれの地域の研究者から受けた教えはもちろん、住民の皆さんとの交流も大変貴重なもので、そ...
帝国陸海軍の戦後史
- 定価 4,400円(税率10%時の消費税相当額を含む)
近代日本のなかで主要な政治勢力の一翼を担った帝国陸海軍は、太平洋戦争の敗戦とともに「解体」を余儀なくされ、政治・社会の表舞台から姿を消した。しかし、このことは旧軍の政治的・社会的な一掃を意味せず、対日占領を挟む戦後史のなかで、一部の組織や制度は「再編」されて存続した。こうした過程を〈帝国陸海軍の戦後史〉としてとらえた場合、旧軍エリート(概ね終戦時に佐官級以上であった職業軍人)の政治的な言動は、どのように位置付けることができるのであろうか。 本書では、かかる問いに対して、三つの視点 ? GHQ...
スペイン市民戦争とアジア
- 定価 1,980円(税率10%時の消費税相当額を含む)
1936年に勃発したスペイン市民戦争は、1930年代の歴史的分岐点になったというだけでなく、世界の今を解くカギを秘めた出来事であった。市民が人間の尊厳と自由を守るために立ち上がる大義がそこには存在した。「反ファシズム」の旗印のもと、アジア各国を含む世界55ヶ国から集まった多種多様な義勇兵の存在を通じて、スペイン市民戦争における闘いの今日的意義を検証する。*本書は「九大アジア叢書」第6巻として2006年に刊行したものを、このたび創刊するKUP選書に再録し、新装版として刊行するものです。 (さらに&...
明治維新を問い直す
- 定価 1,980円(税率10%時の消費税相当額を含む)
令和という新しい時代を迎えた現代において、明治維新を考え直すことには、どのような意味があるのだろうか? 平成の終焉が決まった2018年は、ちょうど明治維新150周年の節目の年であった。この年の前後から、再び明治維新を問い直そうという動きが、日本のみならず世界各地で活発になったが、その一環として、九州大学大学院地球社会統合科学府は、「九州から見た明治維新とアジアの近代化」と題した明治維新150周年記念国際シンポジウムを主催した。本書は、このシンポジウムに参加した内外の研究者が、明治維新を日本とアジ...
日本における地政学の受容と展開
- 定価 4,070円(税率10%時の消費税相当額を含む)
地政学とは、一般に対外政策において地理的条件を重視する考え方のことを指し、20世紀初頭に国家と領土に関する学問としてスウェーデンの国家学者チェレーンによって提唱された。本書では、20世紀初頭における地政学の成立から第一次世界大戦後のドイツにおける興隆、英米における展開を辿ったのち、1920年代の日本における地政学の受容とその後の展開、さらには戦後の反省について検討した。1920年代の日本の地理学においては、新興学問としての地政学を地理学の一部として認めるか否かが議論され、概ね、地政学は地理学の一...
「昭和の大合併」と住民帰属意識
- 定価 4,620円(税率10%時の消費税相当額を含む)
住民の帰属意識は、「昭和の大合併」(1950年代)において、その賛否をいかに左右したのだろうか?本書はこの疑問を中心に据え、四つの合併事例(長野県上伊那郡宮田村、岡山県英田郡西粟倉村、福岡県筑紫郡太宰府町、奈良県天理市)を分析するものである。「昭和の大合併」は日本の第2次全国規模市町村合併政策であり、中央政府(とりわけ当時の自治庁)がこれを司法措置で推進した。住民帰属意識とは、自らが住まう地域等に対して住民が抱く意識、ローカル・アイデンティティのことである。分析の結果、三つの事例においてはこの帰...