18世紀ニューイングランド漁業のグローカル・ヒストリー
- 定価 5,500円(税率10%時の消費税相当額を含む)
「このように、タラ漁業とそれに付随した干しダラ輸出業は、当時のニューイングランド経済最大の富の源となっていたのである」(本文序章より抜粋) 本書は、植民地期ニューイングランドの基幹産業だったタラ漁業と干しダラ輸出業に着目し、同植民地の経済発展及びイギリス本国からの経済的自立化、そして独立戦争へ至るプロセスについて考察したものである。その際本書では、当該期のニューイングランドを代表するタラ漁業・タラ交易都市マーブルヘッド(マサチューセッツ植民地)がケーススタディとして取り上げられ、同都市のタラ商人...

ある助産婦の物語
- 定価 6,380円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書は、Laurel Thatcher Ulrichによって1990年にアメリカで出版された A MIDWIFE'S TALE: The Life of Martha Ballard, Based on Her Diary, 1785–1812 の翻訳書である。歴史学者ウルリッヒの代表作である原書は、1990年にバンクロフト賞、アメリカ歴史学会のジョン・H. ダニング賞、その年の最もすぐれた女性史研究に贈られるジョーン・ケリー賞を受賞したほか、翌1991年にはすぐれたアメリカ史の書籍に与えられる...

「第三帝国」以前の「第三の国」
- 定価 3,960円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書は、前近代的な宗教思想であった「第三の国」das dritte Reich が、近代的な社会思想として展開し、ナチスの「第三帝国」das Dritte Reich へと変容していく過程を明らかにする。12世紀イタリアで生じた歴史を三分割する思想が、ナチスの語彙とは異なる意味で用いられ、19世紀後半から第一次世界大戦期までのヨーロッパやロシア、それに日本に多大な影響を与えたことは、いまだ学術的に究明されていない。 「第三の国」の言説をめぐる以上のような研究状況の中で、トーマス・マンを考察の中心...

前近代イスラーム社会と〈同性愛〉
- 定価 5,280円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書は、およそ9-14世紀のイスラーム社会における〈同性愛〉という概念が芽生えていく過程を明らかにするものである。一般に、現代に至るまでイスラーム法では同性愛が禁じられているが、歴史的には男性同士の性愛が文学作品などに広く描かれている。本書は、このような状況を歴史学的に理解するため、様々な事例を文献に則って具体的に示すと同時に、「近代の産物」とされる「同性愛概念」に類似したものが、イスラーム社会において前近代において芽生えつつあったことを明らかにする。 序章から第1章まで、かなりの紙幅を割いて、...

日本社会と継承語教育
- 定価 3,960円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書のねらいは、継承語や母語・母文化が当事者やその家族、民族にとってのみならず、日本社会にとっても重要かつ必要な文化資源・言語資源であることを様々な事例をもとにひも解いていくことである。このため、本書では、継承語と継承語教育について、法制度・政策、文学・心理学、言語習得・学習動機、異文化コミュニケーション、継承語教育理論、教育実践、人権といった様々な領域から切り込んでいく。 序では、日本の法制度において多文化・多言語環境で育つ子どもに対する平等性・公平性をもった学習権保障が抜け落ちている点を指摘...

Modern Economic Sciences on Environment, Growth and Information
- 定価 5,500円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書は情報科学等の現代的諸科学を大幅に取り入れ、コンピュータ・シミュレーションの技法等を用いて実際の社会・環境・経営等を含む経済現象を分析することを試みる学問として「経済科学」を定義し、その立場から社会システムの諸問題の解決に取り組む研究成果シリーズの第16巻である。特に環境問題や経済成長といった今日的課題や、情報技術・数理の高度な課題について最新の研究成果がまとめられていることに本巻の特徴がある。 第1章:農地に関する業務を担当する横浜市職員の政策ネットワークを明らかにする。人口が最も多い市で...

内村鑑三 再臨の風景
- 定価 5,940円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書は、日本近代の無教会信仰者、伝道者である内村鑑三のキリスト教思想、その福音の中心にして、旧新約聖書の奥義となる「再臨信仰」に関する研究である。それはまた、戦争と混沌の時代のなかで、旧約の風前の籾殻(もみがら)の如くに生きる、人の救済への途をたどる文学・批評的な再臨論でもある。 プロローグには、旧約学者・関根清三『旧約における超越と象徴』との対話を置き、大江健三郎『燃えあがる緑の木』とともに、人生の懐疑と旧約の森、そこに垣間見える再臨宇宙を論じた。以下、ドストエフスキー文学におけるスタヴローギ...

「専売建築」と妻木頼黄
- 定価 7,480円(税率10%時の消費税相当額を含む)
明治期に活躍した官僚建築家である妻木頼黄(つまきよりなか)(1859–1916)は、当時の本邦建築界の中心的存在だった辰野金吾(1854–1919)に対峙した存在として知られている。英国流の辰野に対する独逸流の妻木、辰野の日本銀行本店本館(1896)に対する妻木の横浜正金銀行本店本館(1904)など、両者を巡る対置的な図式の中心軸にあったのは、帝国議事堂の設計案をどのように選定するかという命題だった。そのため既往研究の多くでは、妻木が明治20年代末以降に主導した大蔵省傘下の営繕組織の系譜や官庁営...

総合管理学の現在地
- 定価 4,950円(税率10%時の消費税相当額を含む)
新しい時代を切り開く学術研究および教育・社会的活動を行う学部として創立された熊本県立大学総合管理学部は、2024年度に創立30周年を迎えた。この30年、社会情勢には様々な「変化」「変容」がみられるが、総合管理学部の陣容も30年の年月を経て大きく様変わりした。組織体制の面では、専門分野に基軸を置きつつ学際的教育研究を充実させるため、2024年4月から専攻制(公共・情報・ビジネスの3専攻)がスタートした。本書は総合管理学部創立30周年にあたり、学際性・総合性(学問領域の横断と統合)と現実的課題の解決...

中国近代における「国語科」の創成
- 定価 5,170円(税率10%時の消費税相当額を含む)
近代国民国家では、言語の共有化、「共通語」、「国家語」の形成によって国家に対する帰属意識とそれぞれが言語を通じてつながり合う共同体意識を育む必要がある。そこで重要な役割を果たすのが国語教育である。中国近代でも、教育予算の十分な確保や政策の全国的普及に多くの難題を抱える一方で、国際的な新教育運動を背景に近代的な学校教育制度の確立が模索されていた。なかでも、1922年の壬戌学制を受けて編成された「新学制課程標準綱要」は、文字通り「Curriculum Standards」として校種間の接続が意識され...
