人文科学
「第三帝国」以前の「第三の国」
- 定価 3,960円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書は、前近代的な宗教思想であった「第三の国」das dritte Reich が、近代的な社会思想として展開し、ナチスの「第三帝国」das Dritte Reich へと変容していく過程を明らかにする。12世紀イタリアで生じた歴史を三分割する思想が、ナチスの語彙とは異なる意味で用いられ、19世紀後半から第一次世界大戦期までのヨーロッパやロシア、それに日本に多大な影響を与えたことは、いまだ学術的に究明されていない。 「第三の国」の言説をめぐる以上のような研究状況の中で、トーマス・マンを考察の中心...

前近代イスラーム社会と〈同性愛〉
- 定価 5,280円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書は、およそ9-14世紀のイスラーム社会における〈同性愛〉という概念が芽生えていく過程を明らかにするものである。一般に、現代に至るまでイスラーム法では同性愛が禁じられているが、歴史的には男性同士の性愛が文学作品などに広く描かれている。本書は、このような状況を歴史学的に理解するため、様々な事例を文献に則って具体的に示すと同時に、「近代の産物」とされる「同性愛概念」に類似したものが、イスラーム社会において前近代において芽生えつつあったことを明らかにする。 序章から第1章まで、かなりの紙幅を割いて、...

日本社会と継承語教育
- 定価 3,960円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書のねらいは、継承語や母語・母文化が当事者やその家族、民族にとってのみならず、日本社会にとっても重要かつ必要な文化資源・言語資源であることを様々な事例をもとにひも解いていくことである。このため、本書では、継承語と継承語教育について、法制度・政策、文学・心理学、言語習得・学習動機、異文化コミュニケーション、継承語教育理論、教育実践、人権といった様々な領域から切り込んでいく。 序では、日本の法制度において多文化・多言語環境で育つ子どもに対する平等性・公平性をもった学習権保障が抜け落ちている点を指摘...

内村鑑三 再臨の風景
- 定価 5,940円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書は、日本近代の無教会信仰者、伝道者である内村鑑三のキリスト教思想、その福音の中心にして、旧新約聖書の奥義となる「再臨信仰」に関する研究である。それはまた、戦争と混沌の時代のなかで、旧約の風前の籾殻(もみがら)の如くに生きる、人の救済への途をたどる文学・批評的な再臨論でもある。 プロローグには、旧約学者・関根清三『旧約における超越と象徴』との対話を置き、大江健三郎『燃えあがる緑の木』とともに、人生の懐疑と旧約の森、そこに垣間見える再臨宇宙を論じた。以下、ドストエフスキー文学におけるスタヴローギ...

人新世とツーリズム
- 定価 4,950円(税率10%時の消費税相当額を含む)
人新世とは何か。 今や、自然科学だけではなく社会・人文科学の分野から人新世に関する議論が活発になっている。本書は、「人新世という時代に私たちはいかに生活し、地球システムをいかに維持していくべきか。また、地球を改変する力、営力となったツーリズムは人新世時代にどう向き合うべきか」を問うたものである。 第1部「人新世という時代」では、人新世議論の発端となった2000年、2002年のクルッツェンらの報告を紹介し、産業革命以後の人新世時代を3つのステージに分けて、その歴史的変遷を概観する。そして、クルッツ...

長崎平戸の宗教地誌
- 定価 5,940円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ユネスコの世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」には、九州北西部の島々が多数含まれている。これらの島々には長い間、「二つのキリスト教」が存在してきた。その島の一つが、長い歴史の中で世界と直接繋がり、日本史の表舞台にもたびたび登場してきた長崎県の平戸島である。 平戸島とその周辺地域には、在来の神道や仏教の諸宗派はもちろんのこと、かつての潜伏キリシタン、カトリック教会、修験道の山伏、琵琶法師の一流派、新興宗教系のシャーマンなど、実に魅力的で多種多様な宗教的要素が今日まで複雑に同居してきた...

Narrative Form of Realism
- 定価 11,000円(税率10%時の消費税相当額を含む)
日本の中国古典研究は漢学や清の考証学などの伝統を受け継ぎ、世界的にも高い水準に達しているだけでなく、中国近代研究も時代の問題意識を強く反映した思想的に意義ある研究を生み出してきた。「中国近代小説が如何に成立したか」という問題は近代文学研究の最も関心が高いテーマの一つであり、厚い蓄積がある。戦後日本知識人の深い反省のもと、竹内好は、魯迅の分析を通して中国の近代形成過程を「下からの近代化」と称した。これは日本の政府主導で行われた「上からの近代化」と対比として、梁啓超、魯迅等の民間知識人が様々な分野で...

Radical Free Merger
- 定価 6,600円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書は、生成文法ミニマリストプログラムにおける、pair-Merge の可能性について考察したものである。通常 pair-Merge は Adjunct のみに適用されるとされるが、Chomsky (2015) 以降の Free Merger の考えを突き詰めると、このような恣意的な操作の適用は望ましくない。本書では、pair-Merge も set-Merge も、Adjunct にも Argument にも適応可能という「Radical Free Merger」を提案し、様々な言語現象の説明...

遠藤周作とキリシタン
- 定価 6,380円(税率10%時の消費税相当額を含む)
遠藤周作は、自作について書き、また語ることの多い作家であった。それは、創作意図、主題等へも及び、その言説が倣うべき一つの権威となり、研究へも作用する側面のあったことは否めない。本書は、そうした状況にとらわれない、作品と資料との関係を実証的に検討した成果を収める。 第一章から第六章までは、長崎を舞台とした切支丹物を主に、参考資料等からの作品への反映状況を検討した論考により構成した。それは、キリシタン時代から近現代までを背景に、創作活動の中核をなす期間に描かれた最初の切支丹物「最後の殉教者」(195...

中世玄界灘地域の朝鮮通交
- 定価 8,580円(税率10%時の消費税相当額を含む)
中世日朝関係は、多数の日本人通交者が朝鮮と交易を展開したという多元性が特徴とされてきた。『朝鮮王朝実録』や『海東諸国紀』などの朝鮮側の史料には、日本の史料では確認できない様々な階層の通交者が来朝したと記されている。しかし、「深処」と称される対馬以外の地域から来る日本人通交者の大半は、15世紀より既に対馬や博多の通交勢力が派遣していた偽使であることが解明された。こうした研究成果により、日朝通交における日本人通交者の多元性は、ともすれば偽使派遣勢力が作り出した虚構に基づく幻想に過ぎないと捉えられてき...
