人文科学 文学
オーロラ・リー
- 定価 5,060円(税率10%時の消費税相当額を含む)
時代は繁栄と貧困が際立つ対比をなすヴィクトリア時代。 ロンドン~パリ~トスカーナと舞台を移しながら繰り広げられる,3人の愛と別れ,そして感動のクライマックス。該博な古典の知識と思索を重ね19世紀イギリス詩壇で一世を風靡し,女性解放思想の旗頭ともなったエリザベス・バレット・ブラウニングの代表作の一大叙事詩が今ここに蘇る。 オーロラ・リー 幼くしてイギリス人とイタリア人の父母を失うも,自立と芸術の道を選んだ新進女流作家。ロムニー・リー オーロラの従兄で,先祖伝来の恵まれた地位と財産を貧民救...
漱石とカントの反転光学
- 定価 7,040円(税率10%時の消費税相当額を含む)
「カントの超絶唯心論がバークレーの超絶実在論にどうだとか云つたな」。『三四郎』の問いから「則天去私」へ解釈の補助線を引いてみる。そして「経験的実在論にして超越論的観念論(カント)」から「明暗双双」に深まりゆく言語批判的な世界反転光学の道と、巽軒井上・西田・ジェイムズの形而上学的実在論との根本差異を凝視する。ここにプラトン=デカルト的な二元思考を革命的に転覆する、漱石の〈生死一貫〉のリアリズム詩学の源泉がある。 銀地のカバーに、黒地の帯。そこに銀文字で綴った上の紹介文からも読み取れる...
テクストの誘惑 フィロロジーの射程
- 定価 2,200円(税率10%時の消費税相当額を含む)
私たちは,いま,書物や情報をめぐる大きな変容のただ中にいる。インターネットの急速な発展は,紙媒体からデジタルへというメディアの変化だけではなく,テクストの読み方から人々のコミュニケーションにいたるまで,従来は想像もできなかった新たな地平を開こうとしているかのようにみえる。 ところで,情報やその意味をめぐって,人類は,太古の昔から多くの思索と経験を積み重ねてきた。なかでも,いくつかの地域で,今日「人文学」として認知されるに至った知の分野においては,とりわけ文字媒体に定着された情報の性格判定,読解...
水の女
- 定価 4,180円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ヨーロッパ文学における「水の女」の系譜は,大小さまざまな流れから成り立つ。但し,その本流は,古代ギリシア神話を水源とし,キリスト教のもとで形を変えながら,中世やルネサンス期の民間伝承や民衆本を経て,近代ドイツのメールヒェンにて川幅を広げ,更にデンマークへと至り,世界文学という海原に流れ出る。 こうした流れの中でドイツ文学の役割は大きい。セイレンの後裔たちは,明るい海原ではなく,奥深い森の湖沼に現れるようになると,文学において頻出する「他者」となり,同時に内面化された「他者」となる。つまり,「水...
日本近・現代文学における知的障害者表象
- 定価 7,260円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書は、主に文学作品における知的障害者の語られ方を通史的に考察することで、近代以降の日本における知的障害者観、人間観はいかなるものであるか、そして私たちはこれから人間をどのように語り得るのかを検討したものである。近代以降、学校等これまでなかった制度がつくられ、従来の士農工商は人間という概念にとって替わられた。士農工商では共同作業ができず、学校などが成り立たないから、教育で伸ばすべき意志や理性をもち、国家・社会に益する存在としての人間概念が、近代社会を成立させる上で必要とされたのである。明治二十年...
英国ルネサンス演劇統制史
- 定価 8,800円(税率10%時の消費税相当額を含む)
イングランドの演劇は中世以来聖史劇や奇跡劇そして道徳劇を中心としていたが,16世紀後半に世俗的な大衆演劇が発達し,シェイクスピアの登場でひとつの絶頂期を迎えた。演劇が隆昌をきわめようとしていたちょうどその頃,宮廷祝典局長を検閲者とする演劇の統制制度が整った。以後演劇は1642年の劇場閉鎖まで,反逆罪や煽動罪を規定する布令に加えて,祝典局長の検閲による統制を受けた。本書は,その統制のありようを歴史的・実証的に跡づける。歴史家や演劇史家は英国ルネサンス期の演劇統制を禁圧的と把握する傾向が強いが,本書...
British Romanticism, Slavery and the Slave Trade 1780s to 1830s
- 定価 8,800円(税率10%時の消費税相当額を含む)
18世紀ヨーロッパ文化の暗部を支えた奴隷貿易,特に英国における奴隷貿易廃止運動を背景に,第一世代のイギリスロマン派詩人(コールリッジ,サウジー,ワーズワース,ブレイク等)の文学的感覚と社会的感受性が,彼らの宗教的,政治的,哲学的思索を総動員し,いかにそれに関与したかを考察。ウィリアム・ウィルバフォース,トマス・クラークソン等の奴隷貿易廃止論,イギリス議会における論争,白人を人種階層のトップに位置づける人種理論,キリスト教思想との関係も視野に入れ,ロマン主義文学の感性が複雑な社会的精神的葛藤の中で...
フラメンカ物語
- 定価 4,180円(税率10%時の消費税相当額を含む)
「フラメンカ物語」は13世紀フランス中南部地方の方言であるオック語で書かれた作者不詳の韻文風俗物語であり,現存する中世オック語作品群のうちでも資料的価値・文学的価値ともに「文句なしの一級品」である。フランス南部カルカソンヌの市立図書館に残る唯一の写本をもとに訳出された八千余行にわたる詩句の厳密な考証と分析に基づいた訳文は,一般の読者にも親しみやすい現代語訳となっており,きわめて明解である。 美しきフラメンカを娶ったブルボンの領主アルシャンボーは,その結婚披露宴での些細な出来事から嫉妬に駆られ,彼...
バンジャマン・コンスタン日記
- 定価 10,340円(税率10%時の消費税相当額を含む)
バンジャマン・コンスタン(1767-1830年、国葬)の1804-16年(36-48歳、途中3年半の空白)にわたる「日記」は、ナポレオン帝政から第二次王政復古に至る動乱の時代を鮮やかに描き出し、政治家コンスタンの複雑な軌跡を浮かび上がらせる。ゲーテ、シラー、シェリング、シュレーゲル兄弟といった当代一流知識人との交流、ヨーロッパ各地の宮廷・サロンに集う貴顕紳士への辛辣な人物評、ライフワークとなった宗教思想史執筆過程の詳細な記述から、思想家としての思索の跡を辿ることができる。さらに恋愛のマキャヴェリ...
残響
- 定価 2,640円(税率10%時の消費税相当額を含む)
統一的なテーマで編集された英・米・アイルランドの短編小説8編。丁寧な注釈を施したハーディ新訳に加え,全8編中7編が本邦初訳。人が作った社会の仕組み,持って生まれた性(さが),避けることのできない老いなどに取り囲まれている人生の中で,生きる喜びと力を与えてくれるものは何か。また,その喜びと力を阻んでいるものは何か。立ち止まって考えたい。耳を傾けたい。失ってはならないものに読者の心を手繰りよせる数々の残響に。 (さらに…)