夕闇の時代
- 定価 7,920円(税率10%時の消費税相当額を含む)
第一次大戦をヨーロッパ文明の衰亡の過程として受け止めた大部分のイギリス人は、戦争を勝利で終えたにも関わらず、不安と恐怖と黙示録的幻想をもちつづけ、危機の言説を形成した。終戦は新しい時代のはじまりというよりも、むしろもっと恐ろしい災禍へ向かう通過点として捉えられたのだった。災禍を未然に防ごうと、大規模な反戦運動が展開され、歴史学、経済学、心理学、生物学、遺伝学などの一連の科学者は戦争の原因を究明しようとした。トインビー、ホブソン、ケインズ、ウェブ夫妻、フロイト、ハクスリー兄弟、ウェルズら著名な知識...
水の女[新装版]
- 定価 2,750円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ヨーロッパ文学における「水の女」の系譜は、大小さまざまな流れから成り立つ。但し、その本流は、古代ギリシア神話を水源とし、キリスト教のもとで形を変えながら、中世やルネサンス期の民間伝承や民衆本を経て、近代ドイツのメールヒェンにて川幅を広げ、更にデンマークへと至り、世界文学という海原に流れ出る。こうした流れの中でドイツ文学の役割は大きい。セイレンの後裔たちは、明るい海原ではなく、奥深い森の湖沼に現れるようになると、文学において頻出する「他者」となり、同時に内面化された「他者」となる。つまり、「水の女...
古代ローマ人の都市管理
- 定価 1,980円(税率10%時の消費税相当額を含む)
古代ローマ人にとっては、都市そのものが国家であり、都市は彼らにとって投資の対象でもあった。彼らは都市を建設しただけでなく、資産として管理したのである。後1世紀のローマは人口100万人を擁する帝国の首都であり、人類史上かつてないほどの過密都市であった。一方、現在のナポリ湾に面するポンペイは、人口1万人余りの豊かで美しい地方都市であったが、後79年にウェスウィウス火山の噴火によって消滅する。このとき、首都ローマで巨大な円形闘技場、すなわちコロッセウムの建設が進む一方で、この地方都市は後62年の大地震...
噴火のこだま[新装版]
- 定価 5,280円(税率10%時の消費税相当額を含む)
1991年6月のフィリピン・ピナトゥボ山の大噴火は、20世紀最大級の規模であった。もっとも深刻な被害を受けたのは、ピナトゥボ山麓一帯で移動焼畑農耕を生業として暮らしていた先住民アエタであった。本書は、1970年代後半から現地でフィールドワーク調査を始め、アエタ社会に関する研究を続けてきた著者が、噴火後10年の時点において、被災者たちの生活再建の歩みと、彼らを支援しようとしたNGOの関与についての記録をまとめたものである。とりわけ研究の視点を、噴火を契機とする、アエタの人々が先住民としての自覚を強...
今と昔の長崎に遊ぶ
- 定価 2,640円(税率10%時の消費税相当額を含む)
長崎の地に住んだ人びとがどのように長崎の文化を形作ってきたのか、長崎の歴史・文化・経済・言語・哲学など様々な分野の研究者が解説し、長崎の隠された魅力をさらに深く探求していく。長崎は諸外国との窓口の役割を長らく果たしてきた。ポルトガル・オランダ・中国を始め、外国の文化が流れ込み、日本の文化と融合した都市、それが長崎である。つまり、グローバル化が叫ばれる現代に先駆けて、数百年も前からグローバル化が行われてきた。その長崎文化の魅力と本質を長崎という文化空間に即して解明すること、いうなればグローカルな視...
古代ローマ人の危機管理
- 定価 1,980円(税率10%時の消費税相当額を含む)
「人類の歴史の中でもっとも平和な時代はいつか?」という問いに答えるのはとても難しい。時代だけでなく、場所も限定して考えなければならないが、前1世紀から後3世紀にかけて栄華を誇り、パクス・ロマーナと呼ばれる平和を実現した古代ローマ帝国は、その有力な候補と言えよう。本書では、その古代ローマ帝国の「平和な時代」を、「戦争のない時代」ではなく、「危機管理に成功した時代」であったと捉える。古代ローマの歴史家、ウェッレイウス・パテルクルスは、アウグストゥス帝が帝国の隅々までもたらした平和によって、人々は追い...
中国語の「主題」とその統語的基盤
- 定価 5,940円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書は、「主題」にまつわる語用論的側面と、その解釈の基盤となる統語論的側面を峻別し、統語論においてPredication関係という統語関係を仮定することにより、中国語の「主題」をめぐる様々な現象の説明を試みるものである。 中国語は、しばしば主題優性言語(topic-prominent language)であると言われる。これは、文頭に「主題」が出てくることが多いからであり、中国語の統語論の研究においても、「主題」という概念が言及されることは少なくないが、実は、この「主題」の定義ははっきりと決まっ...
開戦前夜の日中学術交流
- 定価 5,940円(税率10%時の消費税相当額を含む)
1920-30年、中国文学の若手研究者(中国学第二世代)が続々と北京へ留学した。当時、北京は忘れられた「古都」となっていたが、なお北京大学や清華大学など数多くの大学があり、学術研究の面では依然として中心地であった。その北京で、日本と中国の中国学研究者たちは、さかんに交流していた。しかし、このいわゆる「日中戦争前夜」の数年間の学術交流の実態は、これまで意識的あるいは無意識のうちに見過ごされてきた。本書は、近年偶然に発見された当時の資料等をもとに、北京において繰り広げられていた学術交流の具体的なあり...
Solid Dynamics
- 希望小売価格 $50.00(税込)
本著はエネルギー分散を伴う固体の動力学と関連し、動摩擦、衝撃及び高速破壊の基礎メカニズムが議論されている。本著は4章からなり、第1章では各章の導入説明、第2章では動摩擦の実験とモデル解析、第3章では斜め衝撃挙動に及ぼす動摩擦の実験とモデル解析、第4章では脆性材料を伝播する高速亀裂の実験解析がなされている。内容は以下のとおりである。摩擦は日常的に観察される物理現象の一つであり、その研究は古くからなされている。静的条件下での摩擦力 F は垂直荷重 N に比例し、摩擦係数 μ を用いて、F = μN ...
環境保全のための地下水水質化学 下
- 定価 6,600円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書は1993年に初版が刊行され、水文地球化学において権威ある解説書としての地位を確立している Geochemistry, Groundwater and Pollution, 2nd edition (2005年) の翻訳書である。 本書は地下水に関する地球化学と、水・鉱物・ガス・汚染物質・微生物間の相互作用について、重要で基礎的な概念と数多くの知見を紹介するものである。地下水を取り巻く環境保全を実現し清澄な水環境を実現するといった観点からは、地下水に溶存する汚染物質が地下環境中を移流・分散す...