人文科学
近代初期イギリス演劇選集
- 定価 6,600円(税率10%時の消費税相当額を含む)
演劇の近代は16世紀ロンドンで幕を開けた。従来アマチュアや旅役者一座が担ってきた猥雑で豊穣な演劇文化の伝統は、常設の公衆劇場を拠点に活動する商業劇団へと継承された。新しい時代の劇作家や俳優たちが直面した課題は、「消費者としての観客」という、より多様で、無定形で、御しがたく、得体の知れない集団を相手に、ウケる芝居を継続的に生み出していくという、これまでにない難題だった。共同体的(コミュナル)な演劇から商業的(コマーシャル)な演劇へ。記号的な熱演からより自然な写実的演技へ。イギリス演劇はかつてない革...

ノヴァーリスにおける統合的感官としての「眼」
- 定価 4,400円(税率10%時の消費税相当額を含む)
ドイツ初期ロマン派の詩人ノヴァーリスによれば、世界は本来「精神の啓示」である。そのような世界とは静的かつ固定的な事物の寄せ集めではなく、本来的に「精神」と呼ぶほかない不可視の根源的な力と連関のうちにある。しかし現状においてその連関を認識することができないわれわれは、「精神の啓示」を読み取ることもまたできない。ノヴァーリスはそのような状況を「世界の意味」の喪失と呼ぶ。彼の詩学において一貫して目指されているのは、この失われた「世界の意味」の回復であり、それは世界と「精神」との根源的連関の回復によって...

モノから見た海域アジア史
- 定価 1,980円(税率10%時の消費税相当額を含む)
古来より国と国、地域と地域を分け隔て、結びつけた「海域」は人・モノ・文化の交流の舞台となってきた。その海域からアジア史を見ると、従来の枠組みからは見えなかった歴史が見えてくる。本書は中世の海域アジアを行き交った様々なモノ、石材・木材・陶磁器・貴金属を通じて考古学・日本史・東洋史を専門とする各研究者が日本とアジア、ユーラシアの交流の諸相を解説したものである。写真・図版多数収録。 (さらに…)

土器製作技術からみた稲作受容期の東北アジア
- 定価 8,800円(税率10%時の消費税相当額を含む)
考古学、植物考古学、自然人類学の成果や理化学的年代測定の蓄積により、先史時代の長江中下流域でイネ、黄河流域以北でアワ・キビの栽培化がはじまり、その後、これらが東北アジア諸地域に広がった過程が明らかになりつつある。とくに、イネ栽培を伴う農耕の伝播期において、移住や大きな文化変化が生じていたことは注目される。東北アジアにおける初期農耕の伝播に関する議論において、土器は主要な研究対象とされてきた考古資料である。土器研究では文様や形態的が主な分析項目とされてきたが、その製作技術は注目される。製作技術は土...

ドイツ映画史の基礎概念
- 定価 3,520円(税率10%時の消費税相当額を含む)
戦後のドイツ人は自身の〈ホーム〉を失ったディアスポラの民であり、人々は精神的故郷を求めてさまよい、さすらった。果たして現代のドイツ映画は〈ドイツ人のディアスポラ〉という戦後のビッグ・モチーフに対していかに応答したのだろうか? 21世紀以降のドイツ映画賞受賞作のうち、「移民」「ナチ」「東西ドイツ」を扱った諸作品を異文化理解の立場から紹介・解説する本書は、現代ドイツ映画史への格好の手引書であるといえよう。あらすじ、主題、メディア論的な意味を分析考察し、2000年代から2010年代にかけて生じた作品傾...

「民」を重んじた思想家 神田孝平
- 定価 5,940円(税率10%時の消費税相当額を含む)
神田孝平は、幕末から明治初期にかけて、思想家、官僚として活躍する。思想家としての神田は民衆を「愚民」と捉えず、現存する彼らを政治・経済の担い手と位置づける。また官僚としての神田はこの民衆への評価に立脚した政策を数多く構想する。そして、この政策論が政府の方針と異なる場合、自らの信念を曲げることなく、自らの思想家としての影響力を行使しても、自らの構想を実現しようともする。このように神田は特色のある思想家、官僚ではあるものの、現在では忘れられた人物となりつつある。彼の業績を掘り起こし、その実像を読者に...

朝鮮前期の国家と仏教
- 定価 6,600円(税率10%時の消費税相当額を含む)
従来、朝鮮王朝政府は、建国以来、朱子学を国家の根本思想とする「崇儒政策」を実施する一方で、高麗時代に隆盛した護国仏教を排斥・抑圧する「斥仏政策」「抑仏政策」を推進したとされてきた。ところが、従来の研究は、新国家の形成理念である朱子学と個人の信仰である仏教が朝鮮社会で共存していた状況を考慮せず、「崇儒」と「斥仏」「抑仏」を安易に結びつけていた。また、「斥仏政策」「抑仏政策」の概念が生み出された背景についても、関心が乏しかった。他方、近年、韓国の学界を中心に、近代以来の研究史を展望した上で、通説であ...

若者言葉の研究
- 定価 3,300円(税率10%時の消費税相当額を含む)
生きている言語は常に変化し続けています。現代日本語も「生きている言語」であり、「変化」を続けていると考えられます。では、この「変化」とは何でしょうか。これまで現代日本語の若者言葉に見られる現象は「乱れている」と言われてきました。文化庁の「国語に関する世論調査(平成19年)」でも、「今の国語は乱れていると思うか」という問いに対し、「乱れていると思う」という回答は79.5%に上りました。 しかし、本当に若者言葉は「乱れ」ているのでしょうか。もしそうだとしたら、どのように「乱れ」ているのでしょうか。言...

語りの断層
- 定価 5,720円(税率10%時の消費税相当額を含む)
本書は、国境線が幾度も引き直され、民族・文化・言語の混成が進んだポーランド北部・西部国境地帯が、社会主義末期ポーランドからドイツ連邦共和国へ移住した人々の文学において、いかに表象されうるかを論じている。研究対象とするのは、1950年代半ばから60年代、旧ドイツ領にあたるポーランド北部・西部国境地帯に生まれ、ポーランド語を母語とする人々である。冷戦末期の1980年代ポーランドから西ドイツへ移住した彼らは、冷戦終結後、各人各様に移動と定住を繰り返しつつ、ドイツ語ないしポーランド語で創作に従事している...

古典インドの議論学
- 定価 6,930円(税率10%時の消費税相当額を含む)
中世インドの思想家たちによる自由闊達な議論はインド思想史の発展を促した。インドにおける議論学の歴史は古代ギリシャから続く西洋の議論学の歴史に匹敵する。連綿と続く議論の伝統を下支えしたのは、古くより議論学の体系を有するニヤーヤ学派や仏教徒に他ならない。本書は、インドの知的伝統のダイナミズムを議論学の側面から考察するものである。主資料として9〜10世紀にカシミールで活躍したニヤーヤ学派の学匠バッタジャヤンタによる哲学巨編『ニヤーヤマンジャリー(論理の花房)』を取り上げ、未だ翻訳研究すら存在しない「議...
